Vol.7 No.3 2014
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研究論文:自己抗体解析のためのプロテインアレイ開発(川上ほか)−161−Synthesiology Vol.7 No.3(2014)[1]R. H. Scofield: Autoantibodies as predictors of disease, Lancet, 363 (9420), 1544-1546 (2004).[2]N. Goshima, Y. Kawamura, A. Fukumoto, A. Miura, R. Honma, R. Satoh, A. Wakamatsu, J. Yamamoto, K. Kimura, T. Nishikawa, T. Andoh, Y. Iida, K. Ishikawa, E. Ito, N. Kagawa, C. Kaminaga, K. Kanehori, B. Kawakami, K. Kenmochi, R. Kimura, M. Kobayashi, T. Kuroita, H. Kuwayama, Y. Maruyama, K. Matsuo, K. Minami, M. Mitsubori, M. Mori, R. Morishita, A. Murase, A. Nishikawa, S. Nishikawa, T. Okamoto, N. Sakagami, Y. Sakamoto, Y. Sasaki, T. Seki, S. Sono, A. Sugiyama, T. Sumiya, T. Takayama, Y.Takayama, H. Takeda, T. Togashi, K. Yahata, H. Yamada, Y. Yanagisawa, Y. Endo, F. Imamoto, Y. Kisu, S. Tanaka, T. Isogai, J. Imai, S. Watanabe and N. Nomura : Human protein factory for converting the transcriptome into an in vitro-expressed proteome, Nat. Methods, 5 (12), 1011-1017 (2008).[3]Y. Maruyama, A. Wakamatsu, Y. Kawamura, K. Kimura, J. Yamamoto, T. Nishikawa, Y. Kisu, S. Sugano, N. Goshima, T. Isogai and N. Nomura: Human Gene and Protein Database (HGPD): a novel database presenting a large quantity of experiment-based results in human proteomics, Nucl. Acids Res., 37 (suppl. 1), D762-D766 (2009).[4]M. Maekawa, K. Yamaguchi, T. Nakamura, R. Shibukawa, I. Kodanaka, T. Ichisaka, Y. Kawamura, H. Mochizuki, N. Goshima and S. Yamanaka: Direct reprogramming of somatic cells is promoted by maternal transcription factor Glis1, Nature, 474, 225-229 (2011).[5]J. L. Hartley, G. F. Temple and M. A. Brasch: DNA cloning using in vitro site-specific recombination, Genome Res., 10, 1788-1795 (2000).[6]河村義史, 五島直樹, 野村信夫: ヒト蛋白質工場: 網羅的なヒト蛋白質の発現基盤, 蛋白質 核酸 酵素, 54 (9), 1173-1181 (2009).[7]K. Madin, T. Sawasaki, T. Ogasawara and Y. Endo: A highly efficient and robust cell-free protein synthesis system prepared from wheat embryos: Plants apparently contain a suicide system directed at ribosomes, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97 (2), 559-564 (2000).[8]Y. Maruyama, Y. Kawamura, T. Nishikawa, T. Isogai, N. Nomura and N. Goshima: HGPD: Human Gene and Protein Database, 2012 update, Nucl. Acids Res., 40 (D1), D924-D929 (2012).[9]M. Kuboshima, H. Shimada, TL. Liu, F. Nomura, M. Takiguchi, T. Hiwasa and T. Ochiai: Presence of serum tripartite motif-containing 21 antibodies in patients with esophageal squamous cell carcinoma, Cancer Sci., 97 (5), 380-386 (2006).[10]B. J. Taylor, T. Reiman, J. A. Pittman, J. J. Keats, D. R. de Bruijn, M. J. Mant, A. R. Belch, L. M. Pilarski: SSX cancer testis antigens are expressed in most multiple myeloma patients: co-expression of SSX1, 2, 4, and 5 correlates with 参考文献結果から、約37種類の自己抗体が検出された(図7)。検出された自己抗体の一覧を表2に抗原として示す。LIMS1やTRIM21は健常人でも高頻度(80 %以上)に検出される自己抗体である。TRIM21は肺がんのマーカー自己抗体との報告[9]もあるが、我々のこれまでの研究では健常人でも高頻度(65 %以上)に検出されている。SSX1、SSX2、SSX3、SSX4B、SSX5のSSXファミリー[10]、CTA45A4およびCTA45A5の癌抗原(CTA)、リパーゼのMGLL[11]は最近にがんとの関連が報告されており、今回検出された自己抗体の抗原タンパク質は、いずれもがんとの関連が報告されているものである。一方、IRX2は小脳形成に関わる因子[12]であり、CTNNB2は神経伝達の細胞間コミュニケーションが関係あるタンパク質[13]である。このことから、プロテインアクティブアレイを使用することにより、血清中の自己抗体を網羅的に検出できることが示され、がんと小脳変性症に関連する両方の抗体が検出されている。血中の自己抗体の解析によりがん関連の抗体が検出されたことで、本患者はがんの詳細な検査をすることになり、卵巣がんが発見された。神経症状を発症して神経内科に来られた患者からがんが発見されるケースは珍しくない。まず、がんが発症し、その結果、多くの自己抗体が産生されるようになり、その中のいくつかの自己抗体が神経疾患につながるものになっていると考えられる。現在、これら検出された自己抗体が、新しいバイオマーカーとなりえるかどうかについて、平成25−27年度JST先端計測・機器開発プログラムを採択し、複数の患者および健常人の自己抗体データを取得、解析することによって、検討を進めているところである。プロテインアクティブアレイによる自己抗体のプロファイリングが安価に迅速にできるようになれば、さまざまな診断の精度を高めるための非常に有効な手法になると考えられる。4 今後の課題抗体は、抗原量に対してPCRの増幅に匹敵するほど多量に生産されると言われている。そして、抗体は血液を通して全身を循環しており、抗体を調べることで身体の微細な変化を観ることができると考えられる。実際、プロテインアクティブアレイを用いることで身体の自己抗体の変化をプロファイリング可能になってきており、自己抗体の検出システムは技術的には実用段階に入りつつある。今後、プロテインアクティブアレイを用いた網羅的な自己抗体の検出システムにより、がん患者、自己免疫疾患および種々の疾患について網羅的に自己抗体をプロファイリングし、より多くの疾患と自己抗体の関連データを蓄積していこうと考えている。そうすることで、血中の自己抗体のプロファイリングを行うことで総合的疾患診断を行うことができ、疾患の進行や治療、早期発見、診断・治療の指針、治療効果の評価をすることができるようになると考えている。プロテインアクティブアレイの開発としては、よりタンパク質アレイの高密度化を行い、少量の血液で高感度な測定が経済的に行えるような改良を進めている。そして、一般的な病院や研究施設等でも簡便に使用できるようなシステムにして行きたいと考えている。

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