Vol.7 No.3 2014
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研究論文:自己抗体解析のためのプロテインアレイ開発(川上ほか)−157−Synthesiology Vol.7 No.3(2014)胞を用いた他のタンパク質合成系に比べて優れており、そして、98 %以上の割合でタンパク質を合成することができる[6]。DNA構築からタンパク質合成までの全反応をin vitro系(96穴、もしくは384穴plate)で行い、各反応済みの溶液を次の反応溶液に移すだけの分注操作のみ行えるように反応の最適化を行った。その結果、タンパク質合成の全工程を1週間で完了することが可能な技術を開発した。また、タンパク質合成の工程で作製されるLR産物、PCR産物、mRNAは、−80 ℃で長期間保存することができる。そして、同一タンパク質を再合成する場合は、保存しておいたmRNAを使用することによって、18時間後にはタンパク質を再合成することができる。このタンパク質合成技術と分注機器を組み合わせることにより、約20,000種類のタンパク質を一度に合成し、すべてのタンパク質をアレイ化技術によって同時にアッセイ系に利用することができるようになった。エントリークローンの遺伝子情報、クローンの取得状況、コムギ胚芽無細胞系や大腸菌系のタンパク質発現の結果については、Human Gene and Protein Database (HGPD: http//www.HGPD.jp/)に格納されており、自由に検索可能である。また、作製されたエントリークローンは、製品評価技術基盤機構(NITE)生物遺伝資源部門(NBRC)(http://www.nbrc.nite.go.jp/hgentry.html)から入手できる[3][8]。3.2 タンパク質のアレイ化技術の開発プロテインアレイ技術は、タンパク質-タンパク質、タンパク質-低分子、タンパク質-核酸等の相互作用を網羅的に解析する上で、また酵素-基質タンパク質の解析においても有用である。これまでのプロテインアレイでは、ニトロセルロース膜のシートや表面にニトロセルロースがコートされているか、特殊処理されたスライドガラスの表面上にタンパク質を固定する方法がとられている。固定化方法の特徴から、タンパク質は基質表面上に乾燥状態で固定されることから、立体構造は保たれていない。そのため、従来のプロテインアレイでは、搭載されているタンパク質の機能を解析することはできない。我々は、構築したヒトタンパク質発現リソースおよびハイスループットタンパク質合成技術を生かし、アレイ上で生体反応を再現し、解析することを目指している。そのためにはアレイ上のタンパク質がその機能を発揮する立体構造を維持した状態でタンパク質をアレイ基板上に固定する工夫が必要である。我々はタンパク質の立体構造と機能が保持されているプロテインアレイの開発を行った。まず、磁性ビーズを用いたタンパク質精製技術に着目した。もともと我々のタンパク質合成技術を用いれば、タンパク質にさまざまなタグを付加して合成することができる。タグを付けて合成した目的タンパク質を、リガンドが付いている磁性ビーズを使用して精製することは容易なことである。まず、目的タンパク質を合成時の立体構造を維持した状態で磁性ビーズに結合させる。通常では、磁性ビーズに結合させたタンパク質を溶出し、回収して利用するが、我々は磁性ビーズにタンパク質を結合させた状態でアレイ化する方法を考えた。そこで、特殊な磁性ビーズ結合用のウェルプレートの開発を行い、ハイスループットタンパク質合成技術と磁性ビーズを用いたタンパク質精製かつアレイ化技術を組み合わせ、タンパク質の立体構造を保ちながらアレイ化する技術を開発した(図4A)。このようにヒトプロテオームに対して俯瞰的なタンパク質機能解析が可能なタンパク質を搭載したプロテインアレイを、「プロテインアクティブアレイ」と命名した(図4B)。プロテインアクティブアレイに使用する磁性ビーズを選定す N/SN/SN/S抗体または血清と反応磁石マグネティックプレート光: タンパク質(赤棒はGSTタグ)検出基質PAA作製(HTS-10HD)磁気ビーズに吸着コムギ胚芽無細胞タンパク合成(HTS-10HD)GSH磁気ビーズ発光検出自己抗体溶液中で磁気ビーズを介してタンパク質を固定N/SHRP(青丸)融合2次抗体図4A 磁性ビーズによるプロテインアクティブアレイ作製と抗体検出コムギ胚芽無細胞合成系で合成したGST融合目的タンパク質を、GSH磁気ビーズ表面に捕捉し、この懸濁液をプレートの底に磁石を持つマグネティックプレート(オリジナル)に分注し、非吸着画分を洗浄して除く。このようにして、溶液中で磁気ビーズを介してタンパク質を固定したプロテインアクティブアレイを作製する。プロテインアクティブアレイに抗体(Y)または血清を添加し、アレイ上のタンパク質に結合させ、結合した抗体をHRP融合2次抗体によって化学発光によって検出する。注)新機能抗体開発ハンドブック ㈱エヌ・ティー・エス 第一章5節 「アレイを用いた自己抗体解析」 五島直樹 図3を改変

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