Vol.7 No.3 2014
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シンセシオロジー 研究論文−154−Synthesiology Vol.7 No.3 pp.154-162(Aug. 2014)1 緒言疾患を発症する前または初期段階で診断できること、そして一つの検査でより多くの健康情報が得られる総合的診断を実現することは、安全・安心な国民生活を実現する上で極めて重要な課題である。この研究では、血液1滴に含まれている自己抗体の種類や量を分析することによって、これらの目的を達成することを目指す。本来、抗体は外来の細菌やウィルス等から自らを防御するために高等生物が進化的に獲得した生体防御システムである。この抗体は外来の抗原だけでなく、疾患による過剰なタンパク質の産生や細胞からのタンパク質の異常な放出に伴って、自己のタンパク質に対しても自己抗体を産生することが知られている。生体の異常に敏感に応答する生体防御システムを、疾患の検出に利用することは非常に理にかなっていると考えられる。特に、自己免疫疾患は自己に対する細胞や組織を攻撃する抗体の産生が原因となっておこる疾患であるため、自己抗体は疾患マーカーであると同時に疾患原因でもある。本来なら、自己免疫疾患は自己抗体の検出によって発症前診断が可能であり、早期治療が可能な疾患である。しかし、実際は自己抗体の網羅的検査が確立されておらず、自己免疫疾患の症状が現れてから病院に行くケースが多くなっている。また、自己抗体の関与が示唆される難治性疾患も多数あり、網羅的な自己抗体の検出システムの開発は極めて重要である。糖尿病、がん、アルツハイマー、リュウマチ、拡張型心筋症等の疾患では、疾患マーカーとして自己抗体が利用できることを報告する論文も多くある[1]。我々はこれまでに開発してきた世界最大のヒトタンパク質発現リソースおよびヒトタンパク質合成技術を駆使して抗原タンパク質を調製し、網羅的な自己抗体の検出システムの開発および自己抗体と疾患の関連付けを行ってきている。このように健康に密接に関わり個人ごとに異なる血液中の自己抗体を網羅的に解析(プロファイリング)する技術開発をさらに進めたいと考えている。川上 和孝1、五島 直樹2*我々はポストヒトゲノム研究としてプロテオミクス研究を推進し、ヒトタンパク質の機能解析、タンパク質相互作用、タンパク質構造解析等を大規模に行うための技術基盤の整備を行ってきた。これまでに開発したヒトタンパク質発現リソース、タンパク質発現技術を利用し、プロテインアレイを作製することで血清中に含まれている自己抗体のプロファイリングを世界で最も正確に行うことができる。生体の異常に敏感に応答する生体防御システムを、疾患の検出に利用することは非常に理にかなっていると考えられる。我々が開発するプロテインアレイは生体防御システムを利用した早期診断を可能にし、安全・安心な国民生活を実現する。自己抗体解析のためのプロテインアレイ開発− 生体防御系を利用した総合的疾患診断に向けて −Yoshitaka KAWAKAMI1 and Naoki GOSHIMA2*We have performed functional proteomics on a large scale in the context of post-human genome research. We have also developed infrastructure for the analysis of protein functions, protein-protein interactions, and human protein structures. An accurate method for profiling autoantibodies in serum is developed using human protein expression resources and protein expression techniques. The human biological defense system responds to abnormalities with extraordinary sensitivity. Hence, this system is an effective tool for detecting human diseases at an early stage. Health safety and security can be achieved by establishing an early diagnostic method using the biological defense system and our protein array.キーワード:自己抗体、プロテインアレイ、ヒトタンパク質、生体防御システム、抗原、診断、バイオマーカーKeywords:Autoantibody, protein array, human protein, body’s defense system, antigens, diagnosis, biomarker1 一般社団法人バイオ産業情報化コンソーシアム 〒135-8073 江東区青海2-4-32 TIME24ビル10階、2 産業技術総合研究所 創薬分子プロファイリング研究センター 〒135-0064 江東区青海2-4-7 1. Japan Biological Informatics Consortium TIME24 Bldg. 10F, 2-4-32 Aomi, Koto-ku 135-8073, Japan, 2. Molecular Profiling Research Center for Drug Discovery, AIST 2-4-7 Aomi, Koto-ku 135-0064, Japan *E-mail: n-goshima@aist.go.jpOriginal manuscript received July 17, 2013, Revisions received January 27, 2014, Accepted January 27, 2014Development of a protein array for autoantibody profiling of blood- Comprehensive disease diagnosis using the body’s defense system -

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