Vol.7 No.3 2014
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研究論文:放射線による生体障害を軽減する高安定化細胞増殖因子の開発(今村)−153−Synthesiology Vol.7 No.3(2014)防護剤の開発」であり、特にFGFCについては、「ヘパリンに依存せず高い活性を持つこと」、「FGF1よりも安定性が高い」という医薬品として優れた特性をもつことの発見を軸に、「大量生産系の確立」、「医薬用途を見据えた分子構造の至適化」といった要素技術を統合するとともに、腸管障害や個体死の防護作用を動物実験により実証しています。しかし、PG-FGF1については、独創的な分子である反面、医薬品とするための「品質管理」や「大量生産系の確立」にはまだ課題が残っています。そこでこの論文では、FGFCの成果を中心とし、PG-FGF1については、触れるとしても極簡単に触れるに止めてはいかがでしょうか。回答(今村 亨)研究の意義とシナリオに対してご理解いただき、ありがとうございます。ご提案を踏まえ、一般の医薬品と放射線防護剤とでは、製品として社会に出して行くためのシナリオが異なる点について述べるようにしました。また、PG-FGF1とFGFCは並行的な開発過程の途中にありますが、PG-FGF1は先進的すぎるが故に製品への道のりが遠く、現状で製品化への道筋がより具体的に見えるのはFGFCです。そこでこの論文ではFGFCについての記述を主としました。しかし仮に将来、両方の分子が製品化できると仮定すると、PG-FGF1の方がより優れた製品になると考えています。言い換えれば、現段階で製品として市場に出ているFGF医薬を第1世代と見なすなら、FGFCは第2世代、PG-FGF1は第3世代と言えると考えています。議論3 医薬品の承認に至るプロセスについてコメント(桧野 良穂)承認を目指した生産系の確立については、安全性試験や有効性試験もあまりに一般的な話で、具体的に誰がどうやって行くのかが明確に記述されていません。回答(今村 亨)この研究は、産総研における創薬指向研究が共通に有する困難な課題を持っています。この研究で創薬開発を目指している物質は、産総研の知財の中でも出口に最も近いものの一つと見なされています。医薬品を産総研単独で最終段階まで開発することは、資金的にも組織の体制からも不可能です。しかし、「創薬の作法を無視した研究開発」を行っても、製品化研究への橋渡しをするための真の第二種基礎研究にはなりません。新たな効能を持つ物質が医薬承認を得るまでには、厳密な審査があり、その審査に耐えられる基盤を作り出すのが、産総研における創薬分野での第二種基礎研究の役割だと思います。ここで「安全性試験や有効性試験はあまりに一般的」と見えるのかもしれませんが、実施する上で多くの開発要素と困難があるということをご理解ください。ご指摘を踏まえ、生産系の確立や安全性試験についての記述は大幅に削除し、簡単に記述するに留めました。議論4 論文全体構成についてコメント(湯元 昇)この論文の副題に「創薬に向けた基礎研究機関における研究開発」とつけられているように、創薬プロセスの中には、①産総研のような工学系基礎研究機関が主体的に行える部分、②医療機関や企業との連携で行える部分、③製薬企業が主体的に行う部分の3つの部分があります。この論文では、①②については成果が中心となり、③については8章の中で道筋が述べられていますが、シンセシオロジーの論文としては、成果中心の記述が相応しいと思います。創薬プロセスに詳しくない読者も想定すると、シナリオを全体構成の最初の方で少し丁寧にご説明いただき、この論文では①②の成果を記述していることを明確化した方が良いのではないでしょうか。現在の記述では、放射線防護剤という多くの人の注目を集める成果を期待して読み進んできた読者が、最後の方でまだまだ実用化に遠いという印象を受けるものとなっています。最初の方で、基礎研究機関が主体的に行える部分を明確化することで、ここまでは達成できているというポジティブな印象になるのではないでしょうか。また、シナリオで、放射線防護剤として開発するか、がん治療の副作用を低減する薬剤として開発するかは大きなシナリオの変更と思います。シンセシオロジーの論文としてはシナリオの記述が重要ですので、どのような観点でシナリオを変更したのかを記述して頂きたいと思います。回答(今村 亨)ご提案のとおり、創薬プロセスに詳しくない読者も想定し、図2にてシナリオを最初の方で丁寧に説明する構成に変更しました。このために従来の項目順を並べ替え、1.「はじめに」でシンセシオロジー誌における本項の位置付けを述べ、次に2.で放射線防護剤のイントロダクションを述べた後、3.で「シナリオと構成的方法」について述べ、その中でがん治療の副作用を低減する薬剤としての開発に至った理由を解説するという構成としました。議論5 内部被曝と外部被曝コメント(桧野 良穂)本来、FGF系の医薬品は、高線量の放射線被ばく、すなわち「外部被ばく」を想定しているはずで、内部被ばくの説明が必要であるかが分かりません。一般に内部被ばくは「長時間の積分値」により影響が現れる可能性があることから、その原因物質を体外に排除するためのものです。現在開発しているFGF系の薬剤が、どのレベルの被ばくに効果が期待されるのかを明確に記述していただければと思います。回答(今村 亨)図1について、開発薬剤の対象範囲が分かるように説明を加えました。内部被ばく、外部被ばくの記載順について、強力なガンマ線を出す放射性物質による内部被ばくの場合には、高線量の外部被ばくと同様の機序でも生物学的影響が現れますので、記述を残しました。内部被ばくによる障害のうち、アルファ線とベータ線による生体障害の異質性について、この論文で踏み込んだ解説を行うことは避けました。

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