Vol.7 No.3 2014
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研究論文:放射線による生体障害を軽減する高安定化細胞増殖因子の開発(今村)−149−Synthesiology Vol.7 No.3(2014)FGF1よりも優れていることが示された(図9左)[15]。それだけではない。FGF1の生物活性にはヘパリンの存在を必須とすることおよびFGF1の分子構造がヘパリンの存在下で安定化することから、普段はFGF1とヘパリンを同時に投与するというプロトコルを採用していた。しかし、放射線障害で腸管が著しく傷害されて出血しやすい状態になっている場合では、血液凝固を阻害してしまうヘパリンの共投与は好ましくない。そこで、ヘパリンを併用しない条件において放射線障害を評価した。その結果、FGFCはヘパリンの非存在下でも強い放射線防護活性を発揮することが示された(図9右)[15]。8.2 腸管障害の防護(事後投与による治療)高線量の放射線に対する防護剤の使用にあたっては、被ばくが起きてしまった後に防護剤を投与(事後投与)する場合も多いと考えられる。しかし、そのような使い方で効果を発揮する生物学的放射線防護剤はほとんど無いのが現状である。我々は、FGFCの事後投与の効果を腸管障害の防護効果の面から解析した。10 Gyという強烈な放射線に被ばく後24時間経過後にFGFCを投与し、腸管クリプト細胞の増殖性を調べたところ、多くの細胞が増殖反応を示すことが示された。このことは、放射線によって障害を受けた腸管幹細胞のうち、生き残ったわずかな細胞に対してその増殖をFGFCが促進することを示唆している(図10)[15]。8.3 個体死の防護(事前投与および事後投与)高線量放射線の被ばくは最悪の場合には個体の死をもたらす。そこで、最も意義深い放射線防護活性の評価基準は個体死の抑制であるとも考えられる。我々は、被ばく前にFGFCを単独投与した際に、個体死に至るまでの生存期間が有意に延長されるという結果を得た(図11)。図9 FGFCを被ばく前に投与すると腸管の放射線障害が軽減する。この活性は広い線量範囲でFGF1よりも強く、その差はヘパリンを共投与しない場合に、より顕著になる。(Nakayama et al. IJORBP(2010)のデータを一部抜粋)図10 被ばくの24時間後にFGFCを投与すると腸管上皮幹細胞叢の残存生細胞が増殖反応を示す。腸管上皮細胞が構成する絨毛の切断面を示しており、絨毛と絨毛の間の基底部に上皮幹細胞が存在する。この実験では、増殖細胞が暗褐色に染色される処理を行っているため、強く染まっている細胞は増殖していることを示す。(Nakayama et al. IJORBP(2010)のデータを一部抜粋)7248FGFCFGF1salinesaline10 Gy0 Gy24BrdU注射後の経過時間(時間)10 Gy+heparinsalineFGF1FGFC10 Gy8 Gy12 GysalineFGF1FGFCsalineFGF1FGFC-heparin0.80.60.40.20.60.80.40.201.0salineFGF1FGFCsalineFGF1FGFCrelative crypt numberrelative crypt number****************************************FGFCFGF1saline8 GyFGFCFGF1saline10 Gy10 GyFGFCFGF1saline12 Gy00.20.40.60.81.000.20.40.60.8FGFCFGF1salineFGFCFGF1saline+heparin-heparinクリプト細胞数比クリプト細胞数比

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