Vol.11 No.2 2018
63/66

−114−Synthesiology Vol.11 No.2(2018)編集後記Synthesiology(構成学)誌は創刊から11年目に入っています。本誌は、研究の成果を社会で活用できる形にするために研究者自身がどのようなシナリオを描いて研究開発を進めたのかを記載する論文誌です。具体的には、課題解決のために複数の要素技術を統合していくこと、また、それぞれの要素技術を確立する際に複数の研究アプローチの中から何を選定したのかという研究開発のプロセスを記載するものです。本誌では研究論文、報告、論説の三つのジャンルを設けていますが、本号では研究論文2報、報告1報、論説1報となっていますので、それぞれ技術領域は異なっていますが、読み比べて頂ければと思います。「我が国における5万分の1地質図幅整備」は国土の基盤情報となる地質図を日本全体で整備することを目的に1882年に地質調査所を設立して以降の調査・データ整備の状況を概観すると同時に、精度・信頼性が高い地質図を作成するための最新の研究方法論を述べ、対象地域の特性によって研究方法を変える必要があることを示しています。「食洗器対応伝統工芸品『ナノコンポジット玉虫塗』」は玉虫塗という漆器が持つ独特の美感を損なうことなく耐擦過性、耐久性を付与する目的で、最新の有機・無機ナノコンポジット材料を応用する技術開発に取り組んで組成とプロセス条件を最適化した際の異分野連携と協創の経緯を述べた成功例です。「Additive manufacturing of ceramic components」はセラミックス分野を取り巻く世界的状況を十分分析した上で、産学官が連携するプロジェクトを設立して研究開発に取り組み、複雑な形状や肉厚変化に対応できるadditive manufacturing技術を構築し量産化の目処を得ており、十分イノベーションに繋がる事例です。「放射性廃棄物処分の安全規制と地球科学」は原子力発電所の運転に伴って発生する中~高濃度放射性廃棄物を地下に埋設処分するに当たって、数十万年にわたって安全を確保するため地質学を含む地球科学がどのように貢献していくかについて、これまでの事例と今後の課題を提言した論説で、地震や火山の多い日本にとって非常に重要なポイントです。最近、基礎研究を含む日本の研究開発の国際競争力が低下しつつあるという解析結果が各所から報告され、これを突破するための議論が活発になっています。ある提言によれば、科学研究を行う研究者、科学研究とサイエンス型産業創造のプロデューサー、科学から経済価値・社会価値を生み出すイノベーターという三つのタイプの科学者が必要とされており、特にプロデューサーとしての資質を持つ科学者・研究者が重要と述べています。Synthesiologyは研究の成果を社会に活かすために、課題解決の具体的シナリオを作成して検証したり、要素技術を融合・統合するプロセスについての記述を要件としており、上記のプロデューサー機能を論ずる先駆けと位置付けることもできます。大学、研究機関、民間企業の読者の皆様との議論が進むことを期待しています。(編集委員 景山 晃)

元のページ  ../index.html#63

このブックを見る