Vol.11 No.2 2018
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論説:放射性廃棄物処分の安全規制と地球科学(伊藤)−104−Synthesiology Vol.11 No.2(2018)執筆者略歴伊藤 一誠(いとう かずまさ)1988年3月東京大学大学院工学系研究科資源開発工学専攻修士課程修了。応用地質株式会社入社。2001年博士(工学)取得。同年米国ローレンス・バークレー国立研究所を経て2005年10月産総研深部地質環境研究センター入所。現在、活断層・火山研究部門水文地質環境研究グループ長。2011年原子力安全基盤機構、2015-2017年原子力規制庁技術基盤グループ主任技術研究調査官。水理地質学が専門。放射性廃棄物処分の規制支援として、地下の水理環境の調査、評価に関する研究を担当している。査読者との議論議論1 全体についてコメント(栗本 史雄:産業技術総合研究所、渡部 芳夫:産業技術総合研究所)この論文は、中深度処分の規制に関する産総研の研究成果の活用事例を述べ、今後の高レベル放射性廃棄物処分への利用を見据えた課題をまとめています。その内容は、研究開発の成果を社会に生かすための動向・分析を目標とする「論説」に適っており、シンセシオロジーにふさわしいと判断します。また、2017年7月に公開された資源エネルギー庁「科学的特性マップ」との比較も行われており、意義があると考えます。議論2 規制基準の扱いについてコメント(渡部 芳夫)国の安全規制で先行して整備が進んでいる「中深度処分」規制を概説し、「地層処分」についてこれと比較する際に、資源エネルギー庁が公表した「科学的特性マップ」での要件・基準は、規制そのものの議論においては「地層処分」で同一に扱う事ができない事を十分に読者に伝える事が肝要です。原子力の安全研究を行っている産総研としては、正確で丁寧な記述に努めて下さい。この論説のオリジナルな成果が読者にスムーズに誤解なく理解されるよう、記述の構造や語句・概念等の平易さに努めるなどの配慮が肝要です。回答(伊藤 一誠)ここで比較している両者は、利用される目的や段階、考慮の基となるデータの量や質も大きく異なるものであり、単純には比較できないものであることを明確にするため、両者の目的と利用段階、基となるデータ比較に関する記載を追加するとともに、両者が単純には比較できないものであるが、課題抽出のためにあえて比較するという説明を追加しました。議論3 産総研の研究成果コメント(栗本 史雄)中深度処分の規制に関する産総研の研究成果の活用事例を述べ、今後の高レベル放射性廃棄物処分への利用を見据えた課題を簡潔にまとめていると思います。「3.2.2 活断層に関する規制要求」は産総研成果の活用に至らなかった事例を示しており、今後の研究にとって重要であり、この論文のポイントになると思います。力学的指標に料4 中深度処分における廃棄物埋設地の位置に係る審査ガイドの骨子案 (2017), http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/kisei/00000258.html, 閲覧日2017-09-22. [5]深部地質環境研究コア編: 概要調査の調査・評価項目に関する技術資料-立地要件への適合性とその根拠となる調査結果の妥当性, 地質調査総合センター研究資料集, 560, (2011).[6]西来邦章, 伊藤順一, 上野龍之(編): 第四紀火山岩体・貫入岩体データベース, 地質調査総合センター速報, 60, 地質調査総合センター (2012).[7]原子力規制委員会: 敷地内及び敷地周辺の地質・地質構造調査に係る審査ガイド (2013), https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/kettei/02/kisei_naiki.html, 閲覧日2017-08-16.[8]N. Kato, H. Sato, T. Imaizumi, Y. Ikeda, S. Okada, K. Kagohara, K. Kawanaka and K. Kasahara: Seismic reflection profiling across the source fault of the 2003 Northern Miyagi earthquake (Mj 6.4), NE Japan: basin inversion of Miocene back-arc rift, Earth Planets Space, 56, 1369–1374 (2004).[9]間中光雄, 福士圭介, 宮下由香里, 伊藤順一, 渡部芳夫, 小林健太, 亀井淳志: 2000年鳥取県西部地震の余震域と非余震域に分布する断層ガウジの比較, 地質学雑誌, 118 (8), 459–475 (2012).[10]A. Miyakawa and M. Otsubo: Applicability of slip tendency for understanding long-term fault activity: A case study of active faults in northeastern Japan, Journal of JSCE, 3, 105–114 (2015).[11]A. Miyakawa and M. Otsubo: Evolution of crustal deformation in the northeast-central Japanese island arc: Insights from fault activity, Island Arc, 26 (2), e12179 (2017).[12]K. Ito, T. Tamura, T. Kudo and S. Tsukamoto: Optically stimulated luminescence dating of Late Pleistocene tephric loess intercalated with Towada tephra layers in northeastern Japan, Quaternary International, 456, 154–162 (2017).[13]城谷和代: 地質環境の長期安定性評価手法開発にむけた宇宙線生成核種の利用, 地形, 35 (2), 187–197 (2014).[14]塚本斉: 日本の大規模マスムーブメントデータベース, 地質調査総合センター研究資料集, 543, 地質調査総合センター(2011).[15]高橋正明, 切田司, 大丸純, 風早康平: 日本及び周辺地域の泥火山データベース, 地質調査総合センター研究資料集, 540, CD-ROM1枚, 地質調査総合センター (2011).[16]風早康平, 高橋正明, 切田司, 内藤一樹, 渡部芳夫: 日本列島におけるスラブ起源水の上昇地域の分布図, 地質調査総合センター研究資料集, 616, 地質調査総合センター (2015).[17]竹田幹郎, 間中光雄, 平塚剛, 三好悟, 徳永朋祥, 伊藤一誠: 堆積岩地域における化学的浸透現象の地下水流動への影響, 地学雑誌, 122 (1), 192–213 (2013).[18]経済産業省資源エネルギー庁:「科学的特性マップ」公表用サイト (2017), http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/kagakutekitokuseimap/, 閲覧日2017-08-16.[19]総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会 地層処分技術WG: 地層処分に関する地域の科学的な特性の提示に係る要件・基準の検討結果(地層処分技術WGとりまとめ) (2017), http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/20170417001.html, 閲覧日2017-09-22.[20]高橋雅紀: プレート運動からみた日本列島の地殻変動, 第23回地質調査総合センターシンポジウム「日本列島の長期的地質変動の予測に向けた取り組みと今後の課題 -数十万年の過去を解明し, 将来を予測する技術・知見・モデル-」, 地質調査総合センター研究資料集, 610, 14–15, 地質調査総合センター (2015).[21]山元孝広: 地質学から見た高レベル放射性廃棄物処分の安全性評価-事象のシナリオに基づく長期予測の方法論-, Synthesiology, 4 (4), 200–208 (2011).[22]A. Morris, D.A. Ferrill and D.B. Henderson: Slip-tendency analysis and fault reactivation, Geology, 24 (3), 275–278 (1996).[23]地学団体研究会編: 新版地学事典, 平凡社 (1996).

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