Vol.11 No.2 2018
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論説:放射性廃棄物処分の安全規制と地球科学(伊藤)−97−Synthesiology Vol.11 No.2(2018)認するための具体的な調査・評価手法の例を示した審査ガイドの整備を行っている。例えば、許可基準規則骨子案では、処分場の立地に関しては、火山活動、断層活動、深度の確保、天然資源及びその他考慮すべき事象が規制の要求項目としてあげられ、一例として、火山活動に関しては「廃棄物埋設地は将来にわたって火山活動による地層の著しい変動が生ずるおそれのない区域に設置しなければならない」と規定されている。解釈では「将来」とは少なくとも10万年であること、「地層の著しい変動が生ずる恐れがない」とは、第四紀における活動履歴を評価することによって火道、岩脈等の記録が存在しないことが示されていることなどがある。今後少なくとも10万年間にわたって、火山活動が想定されないことを、事業者が証明すべきとされている[3]。また、審査ガイドにおいては、評価・調査の方法として、調査範囲として廃棄物埋設地及び施設から15 kmの範囲、調査方法としてデータベース等による文献調査、地形調査、地質調査を行うことに加え、将来にわたる火山活動の可能性が科学的根拠を持って否定できる例が示されている[4]。3 既往研究成果と中深度処分の安全規制3.1 規制期間終了後に安全が確保されるべき期間の設定前章に示したように、中深度処分によって埋設される廃棄物中の放射性物質の濃度は長期にわたり減衰しない一方、規制機関が定期的な評価等によって直接関与できる期間は、処分事業の廃止までの期間である300~400年程度である。また、日本においては、長期的には廃棄物は地下水に接触する可能性が高いため、溶出した核種は地下水流動によって長期間をかけ減衰しながら生物圏まで到達し、井戸の利用や農作物等さまざまな形で居住者が被ばくする。規制基準では、居住者の被ばく線量が長期にわたっても一定値以下となることが求められるが、その前提条件として、廃棄物埋設地への断層活動や火山活動の直撃による破壊、あるいは地盤の侵食による廃棄体の地表への急激な接近という地質事象が発生しない地域の選択が求められる。そのような地質事象が発生しないことを要求する期間として、許可基準規則骨子案では少なくとも10万年という期間を規定している。この期間の設定に当たっては、埋設処分される廃棄物の放射能特性の変化と将来にわたる火山、断層活動の発生、あるいは隆起・侵食の傾向に関する予測可能性が担保される期間が重要となる。廃棄物の放射能特性は、図3に示したように約10万年で多くの核種が十分に減衰する。一方、地質事象の予測可能性としては、特に埋設深度の変化に直接影響する侵食量の評価において、過去の海水準上昇時に百数十mという海面上昇が見られる場合、沿岸域では水平方向の側方侵食と堆積による地形変化が生じるため、次の海水準サイクルの海水準上昇時においてどのように侵食が広がるかを予測することは困難である[5]が、海水準低下時の挙動は比較的予測可能であるため、想定される次の海水準上昇が開始するまでの時間である10万年という期間が設定された。3.2 地質変動事象ごとの規制要求の概要3.2.1 火山活動に関する規制要求火山活動に関しては、今後10万年間におけるマグマの貫入、噴出による廃棄物埋設地の変形・破壊が生じないことを、埋設施設近傍約15 kmの範囲に第四紀(現在から約258万年前まで)に活動した火山が存在しないことを持って確認することが要求されている[3]。産総研は、過去の火山活動の時空分布を分析することで、例えば東北日本における前弧域、背弧域の火山活動の特徴を示した[5]。また、日本列島において、調査データと既往公表データをまとめた第四紀火山岩体及び貫入岩体のデータベース[6]を公開した。中深度処分の審査ガイドにおいても、立地調査の文献調査段階において、これらの成果を活用した調査が行われていることを確認することが明記されている。3.2.2 断層活動に関する規制要求発電用原子炉の審査においては、将来活動する可能性のある断層の定義は、「後期更新世以降(約12~13万年前以降)の活動が否定できないものとすること。」とされている[7]。一方、中深度処分においては、3.1節で示したように、原則40年間の稼働期間が前提となる発電用原子炉と異なり、将来10万年間の安全を確保する必要がある。過去の地震の例を見た場合、第四紀において明瞭な活動の記録が残されていない断層の活動によって生じた2003年宮城県北部地震のような例が存在し[8]、最新の活動履歴のみから将来の活動可能性の評価を行うことは将来予測の点で不確実性が大きいと判断された。したがって、中深度処分の審査ガイドにおいては、発電用原子炉と異なり、文献調査あるいは現地調査において存在が確認された断層は、その活動履歴に関わらず将来活動する可能性があるものと考え、処分坑道の中で廃棄物を埋設する部分(廃棄物埋設地)を断層及び周辺の影響範囲の外に設置することを要求している。ただし、考慮すべき断層長さの下限として、1回の活動によるずれが生じた場合でも工学的対策で安全が確保できるという前提で、長さ5 km以上の断層を対象としている。また、廃棄物埋設地が長さ5 km以上の断層の影響範

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