Vol.11 No.2 2018
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論説:放射性廃棄物処分の安全規制と地球科学(伊藤)−95−Synthesiology Vol.11 No.2(2018)行ってきたが、実際に文献調査に着手できていない状況である。そのため、政府は特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針を転換し、立地に関しては科学的有望地を提示し、調査への協力を自治体に申し入れるという方針を打ち出した(2015年5月22日閣議決定)。そして地層処分への地質学的適否の観点での要件・基準を提示し、既存の全国レベルで得られる地質データに基づいて2017年7月28日に全国を対象として、地層処分を行う際に考慮すべき特性の抽出と、日本全国におけるそれらの分布を俯瞰するための科学的特性マップを公開した。今後、産総研地質調査総合センターの安全規制支援研究は、規制機関である原子力規制委員会・原子力規制庁に対して、地層処分の許可基準規則及び審査ガイドに活用できる研究成果を橋渡しする必要がある。そのため、この論文では中深度処分への研究成果の活用の総括に加え、科学的特性マップを参照しつつ、中深度処分と地層処分における安全規制の共通点と相違点を考察することで、今後の地層処分の安全規制における研究課題及び研究成果の規制機関への橋渡しを円滑に行うための成果の発信に関する提案を行いたい。2 放射性廃棄物埋設処分の分類と規制の関与2.1 放射性廃棄物の分類と処分方法原子力発電によって生じる廃棄物の処分は、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(以下、炉規法と言う)において、「政令で定める放射性物質についての放射能濃度が人の健康に重大な影響を及ぼすおそれがあるものとして当該放射性物質の種類ごとに政令で定める基準」によって第一種(高レベル)、第二種(中・低レベル)放射性廃棄物埋設に分類されている。高レベル放射性廃棄物は、主に使用済核燃料を再処理し、ウラン、プルトニウムを分離して残った核種をガラスとともに固化したもの(ガラス固化体)であり、中・低レベル放射性廃棄物は、原子力発電所の炉内構造物や燃料被覆管、制御棒等の放射化金属及びコンクリート構造物、あるいは再処理施設やMOX燃料加工施設から発生する放射性廃棄物のように、比較的放射能濃度が高いものから、建物の換気、洗濯廃液、使用済みのペーパータオル、古い作業衣や手袋等の放射能濃度が低いものまでが含まれる。放射性廃棄物の処分方法は、地表近傍にトレンチやピット等を掘削して廃棄物を保管する浅地中処分、トンネル等の地下利用深度よりも深い深度である100 m程度の深度に坑道を掘削して処分する中深度処分、より大深度である深度300 m以深に処分する地層処分に分類される。ここで、地層処分に該当する廃棄物は、高レベル放射性廃棄物及び中・低レベルの中で、MOX燃料加工施設等で生じる長半減期の超ウラン元素を含む廃棄物である。中深度処分は、原子力発電所の炉内構造物等、中・低レベル放射性廃棄物の中でも比較的放射能濃度が高いものが対象となる等、放射性物質の半減期や濃度に応じた処分方法が適用される。図1に、放射性廃棄物ごとの処分深度を模式的に示す[1]。2.2 廃棄物埋設事業における規制の関与放射性廃棄物の処分事業は、処分場の立地、設計及び図1 放射性廃棄物の分類と処分概念第一種、第二種は放射能レベルによって分類されている[1]。放射性物質として扱う必要のないもの低レベル放射性廃棄物高レベル放射性廃棄物再利用再使用産業廃棄物処分場放射性濃度の極めて低いもの放射性濃度の極めて高いもの放射性濃度の比較的低いもの放射性濃度の比較的高いもの(深度)(めやす)地表クリアランスレベル以下のもの第二種廃棄物埋設第一種廃棄物埋設トレンチ処分ピット処分中深度処分TRU廃棄物ガラス固化体地層処分100 m300 m低高放射能濃度

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