Vol.11 No.2 2018
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シンセシオロジー 研究論文−55−Synthesiology Vol.11 No.2 pp.55–68(Jun. 2018)1 はじめに地質図は地表付近に分布する地層・岩体を岩質・形成条件・形成年代等によって区分し地図上に表したものである。地質図には我々が生活を営む大地についての情報が記されている。我々が住む日本列島は地球上で最も活動的な場である沈み込み帯に位置している。日本列島およびそのもととなったユーラシア大陸の東縁は、5億年以上の間、沈み込み帯に位置し続けてきた。現在も、断層活動、火山活動、地すべり、浸食、隆起、地下水流動、土砂の堆積等我々に対して直接あるいは間接的脅威となり得る地質現象が進行している。地震や噴火および地すべりのような短い時間スケールで起こる現象や造山運動のような数千万年前から数億年前の時間スケールで起きる現象の記録が我々の足下の地層および岩体に刻まれている。また、我々が直接見ることができない地殻深部ないしマントルで起きた現象を記録している岩体が現在の地表に数10 km以上のスケールで大規模に露出しているところもある。結果として、我々の足下には多種多様な地層や岩石が分布する。これら地層および岩石の特質を知ることは、これらを利用あるいは立地基盤として、産業を発展させていく上で欠かせない。事実、明治から戦後復興期にかけて、戦時中の一時期を除き国内鉱物資源開発のために地質図が作成されていた。昭和の高度経済成長期から現在にかけては、国土開発や保全、自然災害の軽減のための基盤情報として地質図が作成されている。この論文では最初に社会における地質図の役割を述べ、地質調査総合センターおよびその前身である地質調査所における地質図幅用語1整備の歴史を概観し、地質図幅整備の全体計画の変遷をたどる。さらに、地質調査総合センターが現在出版する主要地質図幅である5万分の1地宮崎 一博明治15年(1882年)の設立以降、地質調査所は日本国内の地質図幅の整備を行ってきた。現在、この業務は産総研地質調査総合センターに引き継がれている。この論文では地質調査総合センター(地質調査所)における地質図幅整備の歴史を振り返り、全体計画の変遷を概観する。全体計画は図幅整備の全体シナリオと見ることができる。さらに、地質図幅作成の実例を紹介し、地質図幅の作成における個別シナリオについて述べる。個別シナリオに従い研究要素は統合され、地質図が作成される。個別シナリオは地域地質に強く依存する。5万分の1地質図幅は地質調査総合センターで整備する最も基本的な地質図である。全体シナリオと個別シナリオの視点から5万分の1地質図幅整備を論じた。我が国における5万分の1地質図幅整備− 地質図整備における全体シナリオと個別シナリオ −Kazuhiro MIYAZAKIThe Geological Survey of Japan started a geological mapping project in Japan in 1882. This paper summarizes the historical transition of the strategy of the geological mapping project, which coincides with the transition of the overall scenarios of the mapping project in Japan. Each geological map has an individual scenario on which integration of research elements is conducted. Each individual scenario depends on local geology. 1:50,000 quadrangle geological map is the most basic one developed in the Geological Survey of Japan, and I discuss the mapping project in terms of the overall and individual scenarios.キーワード:5万分の1地質図幅、20万分の1地質図幅、7万5千分の1地質図幅Keywords:1:50,000 quadrangle geological map, 1:200,000 quadrangle geological map, 75,000 quadrangle geological map産業技術総合研究所 地質情報研究部門 〒305-8561 つくば市東1-1-1 中央第7Research Institute of Geology and Geoinformation, Geological Survey of Japan, AIST Tsukuba Central 7, 1-1-1 Higashi, Tsukuba 305-8561, Japan E-mail: Original manuscript received January 25, 2018, Revisions received March 26, 2018, Accepted March 28, 20181:50,000 quadrangle geological mapping project in Japan—Overall and individual scenarios of mapping project—

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