Vol.11 No.2 2018
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研究論文:食洗機対応伝統工芸品「ナノコンポジット玉虫塗」(蛯名ほか)−71−Synthesiology Vol.11 No.2(2018)ストが安定である有機、表面硬度が高い無機の両者のよい面を併せ持つ保護層を有機無機コンポジット材料によって実現する取り組みを実施することにした。有機無機コンポジット材料は、通常耐水性を向上させるために高温処理を行う。しかし、玉虫塗は基材に耐熱性がない場合があることと、玉虫塗自体に耐熱性がないことから、加熱プロセスを適用することができないという問題があった。そこで、加熱することなく硬度を上げられる紫外線硬化樹脂を用い、さらに粘土を添加することで室温プロセスのみで高硬度を得ることを目指した。高耐久性漆器開発における特性要因図を図3に示す。ポリマー粘土コンポジット材料において、紫外線硬化樹脂が用いられた例があるが、粘土添加量を5 wt%に増やすことによって透明性が低減した[10]。そのため、溶媒・粘土・樹脂の選択を慎重に行い、最適の組み合わせを見つけなければ、高い透明性が得られないことが分かった。玉虫塗表面に密着し、剥がれることのない塗膜を形成するため、溶媒・粘土・樹脂を選択し、それらの混合比を最適化するとともに、混合方法を検討した。3.2 ナノコンポジット保護膜成分の選択粘土を樹脂に均一分散させるために、粘土層間のナトリウムイオンを有機カチオンに交換する有機化を行うことがある[11]。このとき用いる有機カチオンの種類によって樹脂への分散性が変わるため、有機カチオンの選択が重要である。ここでは異なる有機カチオンを用いた4種類の有機化粘土を検討対象とした(表1)。まず4種の有機化粘土を、当初想定された有機溶媒であるトルエンに分散させ、その分散性を評価することにした。トルエン分散液の固液比は0.1 wt%とした。大塚電子株式会社製ファイバー光学動的光散乱光度計FDLS-2000を用い、粒子径分布を測定した。その結果を表2に示す。ヒストグラム解析でSPN、 STNの平均値が小さく、SAN、 SAN316が大きいという結高耐久性漆器の実現耐食洗器性の実現耐紫外線性の実現美しい外観の実現透明性・つやの実現高密着性の実現耐擦過性の付与樹脂の選択(1)粘土と樹脂の割合(1)有機化粘土の選択(3)樹脂の選択(3)粘土と樹脂の割合(3)紫外線均一照射塗工回数スプレー圧力ペースト粘度溶剤の選択樹脂の選択(4)表面硬度の向上有機化粘土の選択(2)樹脂の選択(2)粘土と樹脂の割合(2)材料・組成面の検討製品デザイン塗工プロセス有機化粘土の選択(1)炭素数有機化剤粘土(製品名)SPN塩化ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウム75STNメチルトリオクチルアンモニウム8SANジメチルジステアリルアンモニウム18SAN316ジメチルジステアリルアンモニウム18成分名平均値粘土[nm]標準偏差[nm]ヘーズ値[%]ガラス板0.41SPN21.3STN68.6SAN42.3SAN31623.4(粒子径はヒストグラム解析結果、ガラス板の厚みは1 mm)3.4×1041.9×1042.9×1041.9×1046.4×1021.1×1039.2×1028.8×102--図3 高耐久性漆器開発における特性要因図表1 用いた有機化粘土と有機化剤表2 有機溶媒中の有機化粘土粒子径平均値とガラス塗布サンプルのヘーズ値

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