Vol.11 No.2 2018
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論文:我が国における5万分の1地質図幅整備-地質図整備における全体シナリオと個別シナリオ- 宮崎 一博1882年に地質調査所が設立されて以来、一貫して日本の地質図を整備することで国土の基盤情報として資源開発、インフラ整備、産業立地、減災など社会、経済を下支えして大きな便益を生み出してきた経緯を概観している。一方、後半では精度と信頼性が高い地質図を作成するため、要素技術としての野外調査や分析等の室内研究について述べ、それらをどのように統合していくかのシナリオについて具体的事例を用いて説明しており興味深い。論文:食洗機対応伝統工芸品「ナノコンポジット玉虫塗」-見る漆器から使われる漆器へ- 蛯名 武雄ほか伝統工芸と先端科学・工学とを融合させることで従来製品の弱点や壁を突破して社会に新しい価値を提供した貴重な事例である。具体的には漆器「玉虫塗」のユニークな外観を保ちながら、漆器共通の弱点である耐擦過性を著しく向上させる目的で有機粘土をナノコンポジット化した保護膜を開発し、食洗器にも対応できる漆器として新規用途を開拓した経緯と結果を纏めたものである。東北工芸製作所と産業技術総合研究所との深い連携・協創は他の分野にも示唆を与える成功例である。報告:Additive manufacturing of ceramic components-Towards innovation of ceramic industry- Tatsuki OHJIセラミックス分野は近年、新興国の技術力向上に伴って世界シェアが低下している。本報告は、イノベーションに繋がることが期待できる、従来技術では困難であった肉厚が不均一で複雑な形状のセラミックス製品を作製する技術としてAdditive Manufacturing(AM)に着目した。産学官が連携して取り組む国の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の中で、要素技術の選択と統合により課題解決した研究開発の方法論と得られた試作品の特徴などを詳述している。論説:放射性廃棄物処分の安全規制と地球科学-処分場の立地基準への研究成果の橋渡し- 伊藤 一誠原子力発電によって生じる放射性廃棄物を安全に埋設処分し管理していくためには、原子力規制委員会などが担当する安全規制基準や審査ガイド等の整備が必要である。その際、放射性物質の半減期を考慮して数十万年にわたる火山活動、断層活動、隆起・侵食現象、地下の熱水挙動など地質学・地球科学上の総合的な知見が不可欠である。この論説では産業技術総合研究所が行なってきた地質研究の成果を中深度処分(深度100 m、低レベル放射性廃棄物対象)に活用した例を述べるとともに、より厳しい規制基準が必要な高レベル放射性廃棄物(使用済み核燃料など)の地層処分(深度300 m以上)を検討する際に求められる地質学上の研究課題を抽出している。また、得られた知見を円滑に橋渡しするため、関係機関間のコミュニケーションのあり方も提言している。本誌は、成果を社会に活かそうとする研究活動の目標、具体的なシナリオや研究手順、特に実用化のために要素技術を構成・統合するプロセスを記述した論文誌です。本号に掲載した論文の価値が一目で判るように、編集委員会が作成したシンセシオロジー論文としてのポイントを示します。シンセシオロジー編集委員会電子ジャーナルのURL産総研HPhttp://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/synthesiology/index.htmlJ-Stagehttps://www.jstage.jst.go.jp/browse/synth/-char/ja/Synthesiology論文のポイント−i−

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