Vol.11 No.2 2018
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研究論文:我が国における5万分の1地質図幅整備(宮崎)−63−Synthesiology Vol.10 No.2(2018)チャート・珪質頁岩・泥岩が整合に積み重なる露頭が図幅の北半分で確認できる(図12)。一方、図幅の南半分では岩相が異なる。南側ではミグマタイトと呼ばれるマグマが固結した岩石と変成岩が数cmから数mスケールで混在する岩石が出現する。変成岩の部分は詳細に観察すると泥岩が部分溶融した溶け残りと考えても矛盾しない岩石であることがわかる。層状チャートも出現するが、よく観察するとチャートを構成する石英粒子は北部のものに比べ著しく粗粒である。このような岩相の違いがなぜ起こったのか。その合理的な説明はできるのか。など、露頭観察だけでは結論が出ない場合がある。変成岩の研究ではこのような場合、試料を持ち帰りさらに調べる。変成岩地域の野外調査では、原岩の種類別に岩相を分け、これに露頭で採取した試料(薄片)を偏光顕微鏡観察で識別して、鉱物共生関係による変成時の温度圧力条件を反映した変成分帯図を作成する。これらを調査ルートごとにまとめた統合柱状図にして全体の地質構造と温度構造の推定を行う(図9の③および図13)。変成岩の室内研究では、大局的な温度圧力構造の推定に加え、定量的な温度圧力推定も行う。そのためには採取した変成岩試料中の鉱物の化学組成分析が必要である(図9の④と図14)。温度圧力条件推定は共存する2種以上の鉱物間での元素分配から見積もる。1960年代以降、さまざまな鉱物間の元素分配係数を用いた温度圧力計が考案されている。現在では構成鉱物の組成と岩石の化学組成から、変成岩が形成された温度圧力における鉱物および流体の量比および組成を、自由エネルギー最小化の条件を満たすように計算するプログラムが存在する。鉱物間の熱力学的平衡状態を利用した変成岩形成条件推定方法の開発はほぼやり尽くされた感がある。一方で、変成岩の熱力学的解析手法は造山帯形成モデルの定量化に大きく貢献したことも確かである。4.3 個別要素の地質図への統合「御油」図幅では、野外調査で得られた結果と室内研究で得られた結果を統合するとおもしろいことがわかった。室内研究で行った地質温度圧力計を用いた見積もりで、圧力値を深さに換算した値と野外調査から作成した地質柱状図の片理に垂直な方向の距離がほぼ一致した。即ち、片理に垂直な方向が変成岩ができた当時の重力の方向をほぼ表していると考えて矛盾のない結果が得られた。「御ab変成チャート(ch)cdefghmdmdmdmdmdmdmdmdchchchsssssschtomf変成砂岩(ss)変成泥岩(md)変成砂岩(ss)変成珪質泥岩苦鉄質貫入岩苦鉄質貫入岩花崗岩断層断層断層ミグマタイト(変成岩<花崗岩)変成チャート(ch)変成砂岩(ss)ミグマタイト(変成岩>花崗岩)ミグマタイト(変成岩レンズを伴う)花崗岩3.5 cm1 m1 m1 m20 cm10 cm0.5 m3 cm5 m100 m「御油」地域の北部で見られる岩相「御油」地域の南部で見られる岩相② 露頭観察abcdefgh図12 野外調査における露頭観察の例(「御油」図幅)[7]見出しの番号は図9中の番号に対応。a-d「御油」地域の北部で黒雲母帯で見られる岩相。a変成チャート(ch)の露頭; b露頭左から変成チャート間に変成珪質頁岩を挟み、右側は変成泥岩(md); c変成泥岩(md)に挟まる変成チャート(ch); d変成泥岩(md)中にレンズ状に挟まる変成砂岩(ss)。e-h「御油」地域南部のざくろ石菫青石帯で見られる岩相。e変成岩的部分(メソゾーム)が多いミグマタイト; f花崗岩的部分が多いミグマタイト;g変成チャート(ch)の片理に平行に貫入する片麻状トーナル岩(to)(=広義の花崗岩類)と苦鉄質貫入岩(mf);h変成砂岩を原岩とするミグマタイト。

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