Vol.11 No.2 2018
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研究論文:我が国における5万分の1地質図幅整備(宮崎)−61−Synthesiology Vol.10 No.2(2018)た地質構造モデルは覆される場合が多い。野外調査では絶えず地質構造に関する仮説を立て、野外調査でこれを検証し、修正していく作業を繰り返し行う(図9の①および図10)。この作業は地質図作成の作業の中で最も時間がかかる。野外調査による繰り返し検証を行うことで、調査を行っていない沢や尾根筋でも岩相境界や断層の位置を推定できる高い精度の地質図を作成することができる(図10)。地質図幅内に分布する地層および岩体の分類区分の正確さを保つためには野外調査で採取した試料を用いた室内研究も重要になる。野外における肉眼観察だけで得られない地層・岩体の形成環境や形成場、およびこれらが形成された時代が室内研究により明らかになるからである。室内研究の結果は野外調査にフィードバックされさらに精度の高い地質図の作成を可能にしている。4.2 5万分の1地質図幅作成の要素(変成岩地域の地質図幅の場合)5万分の1地質図幅作成の要素とその統合を見ていく上で、一般論を展開することは困難な場合が多い。その理由は、対象となる地質によって室内研究の手法が大きく異なるためである。以下では、東海地方豊橋周辺の5万分の1地質図幅「御油」[7](図11)を例に、もう少し詳細に見ていく。これらの図幅で著者は変成岩を担当した。変成岩および変成岩地域の室内研究では、岩石学、構造岩石学的研究および放射性元素を用いた年代学的研究が主になる。一方、堆積岩地域の室内研究では微化石層序学的研究および堆積学的研究が主となる。必要とされる分析・解析技術も大きく異なっている。日本列島に広域に分布する変成岩は大きく分けて2種類地質図幅の体系的整備シームレス地質V220万分の1地質図幅5万分の1地質図幅沈み込み帯造山運動についての新たな知見など全国統一凡例・凡例情報の構造化と構造化・情報更新全国完備124区画(2010年達成)・改訂継続全国1274区画(約60 %作成済み)・重要地域新規作成学術論文として公表要素野外地質調査露頭観察ルート調査柱状図・断面図室内研究(対象が変成岩の場合)鏡下観察EPMA分析・SEM 観察・岩石の形成温度圧力条件・岩石組織定量解析地質構造の推定統合地質構造発達史の構築原岩年代・変成年代変成帯の熱・移流・流動モデリング変成反応動力学目標5万分の1地質図幅(地域地質研究報告)研究論文(沈み込み帯造山運動・変成反応動力学)年代測定変成帯の温度圧力構造(変成岩の場合)地域へ、基盤情報として提供新たな知の創出試料野外調査による繰り返し検証地質図への統合①②③④⑤⑥⑦⑧図8 産総研地質調査総合センターにおける地質図幅の体系的整備図9 5万分の1地質図幅作成の要素とシナリオ

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