平成30年度研究評価委員会(地質調査総合センター)評価報告書
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を実証した。蓄熱システムにおける省エネ効果は、原油換算にて2022年には1.05万kL/年、2030年には5.41万kL/年がそれぞれ見込まれ、粘土系蓄熱材を用いた未利用低温廃熱の有効性を実証した。 ・未利用資源の窯業原料化 一部の業界内で懸念されていた陶磁器原料の枯渇問題を地場産業全体の問題として抽出し、鉱業に関する地域活性化の具体的施策の道筋を初めて示した。また、未利用資源「青サバ」の利用が開始され、原料の安定供給に具体的に貢献したことは特筆に値する。 ・海底曳航式システムの開発 民間企業の製品開発力に加えて、産総研の持つ海洋地質調査の技術やノウハウを最大限に活かすことによって、詳細な情報を得るための音源や水深や海水の状態を測定する各種センサーなど新しい製品開発の方向性を示すことが可能となった。共同開発によってもたらされる成果は、例えば、水深1,000 m以上の海域で数10 cmの垂直分解能(従来の産総研システムの反射法音波探査の分解能は数10 mなので、数百倍の向上を目指す)の探査能力をもつ。これらの開発により、より高精度な日本の海底鉱物資源広域調査が推進可能となる。さらに、地質情報の高分解能データを使えば、例えば、これまで困難だった比較的深い海域の地層分布やそのずれが評価できれ、活断層活動履歴を評価するための新手法開発につながり、防災等にも貢献できる。 ・熊本地震など最近起こった地震に関する緊急調査・研究 地震発生直後に関連地質情報を発信することは、国や自治体が適切な防災対応を取るために非常に重要であり、緊急調査で地震発生直後にしか取得できない地表変動等の貴重なデータを、その後の風雨や復旧工事で消える前に取得することは地震予測研究の上でも極めて重要である。これまで調査から得られた知見は、国の活断層の長期評価に反映されうるデータになると同時に、住民の意識啓発や復興計画や防災対策等に活用された。また、国の今後の地震調査研究の基本施策立案のための重要な情報となっている。熊本での活断層調査での実証的なデータ取得は、全国主要活断層帯の連動性評価手法の高度化に直結する事例となった。また、連続試料採取方による放射性炭素年代測定は、古地震イベントの年代制約に非常に有効であることが分かった。今後、本邦における活断層調査手法のスタンダードとなり得る。 ・地域の水文地質特性と調和した地中熱ポテンシャル評価手法の開発 同一地域について、クローズドループ,オープンループ、帯水層蓄熱システムの3種のシステムのポテンシャル評価を可能としたことは、地域の地質・地下水環境に適合した地中熱システム導入の判断材料となる。これらのポテンシャルマップは、NPO法人 地中熱利用促進協会や福島県地中熱利用技術開発 有限責任事業組合などの参加企業によるシステム設計への活用が高く期待されており、国内における地中熱システムの導入・普及への起爆剤となる。 ・ASTERの運用と利活用に関する研究 衛星データの品質管理や長期アーカイブについては、国際標準も見据えており、国内のみならず、国際的な連携を通じた宇宙ビジネスの発展に寄与するものである。さらには、衛星データ(デジタル資産)の長期アーカイブという運用上の課題を解決するために、企業との連携によりこの問題を解決する研究に発展している。衛星データのみならず、様々なデジタル資産の長期アーカイブに関する連携企業のビジネス展開が期待しうる。 ・表層土壌評価基本図の整備と技術の橋渡し 土壌の地球化学情報とリスク情報を統合したマップは世界初であり、規制当局による規制制度の見直しや、自治体における土地利用計画の策定ならびに民間事業者における環境リスクの自主管理等への貢献が期待される。また、関連評価技術は建設や土木分野における建設残土の評価と対策等にも広く適用することができ、社会への橋渡しが実現できる。 - 45 -

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