平成30年度研究評価委員会(地質調査総合センター)評価報告書
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・医療用X線CT装置を用いた非破壊計測に関する研究 長さ1 mのボーリング試料や大きさ数十cmの岩石、化石試料といった地質試料の内部構造を非破壊で効率的に解析するため、今年度、医療用CT装置を最新型へ更新した。これによって地質試料の内部構造や物性分布の解析方法が改善され、より多くの情報を迅速に取得できるようになった。特に、近年調査が増えている沖積層や海底堆積層など未固結の試料の解析能力が向上した。今年度、活断層や津波の評価や地下構造解明などのために採取した堆積物試料を撮影し、堆積構造や岩相変化の観察、試料分割計画に活用した。CT画像の解析により、肉眼では観察しにくい津波堆積物をより鮮明にとらえることができた。現在の海底表層堆積物のCT画像から生物の這い痕や巣穴などの生痕の形態を三次元的に観察し、さまざまな海洋環境における生痕の特徴を調べた。地質標本館の展示を通じて地質の研究を視覚的に伝える一環として、化石標本や岩石試料を撮影した。CTデータから作成した異常巻アンモナイトの立体模型を、平成30年10月に地質標本館で開催した「化石の日」企画展において展示した。また、海洋調査の理解促進のために、マンガンノジュールを撮影し、半割した試料と一緒に展示した。 ・火山噴火に対する緊急調査・研究 火山の噴火発生時には、緊急調査により火山灰の分布調査や構成物解析、火山ガスの成分・放出量観測を行い、火山噴火予知連絡会による火山活動の評価や、地元自治体の防災対応の検討に必要となる地質情報を迅速に提供した。これに合わせ、GSJ公式ホームページから、調査結果等を公表した。噴火活動の緊急調査結果のHPは、産総研公式HPのトップページのバーナーとしてリンクを張り、広く社会一般へ情報を提供した。平成30年度は、草津白根山、口永良部島、桜島、霧島(新燃岳・硫黄山)において緊急調査を実施し、噴火予知連への報告は34報に達する。突発的な噴火発生に際して、気象庁職員が降灰を採取し、火山灰の写真及びサンプルをGSJに送付し、GSJがそれらを迅速に分析し結果を報告する協力体制を平成25年に構築し、継続してきた。平成30年度は、特に10月以降噴火を繰り返した口永良部島において、気象庁職員が現地で採取した火山灰が迅速に送付され、GSJで分析作業を行った。この結果、2014年噴火、2015年噴火との相違が明らかとなり、今回は地表近傍まで上昇してきたマグマ上部が固結化する過程での噴火現象が発生している可能性を噴火当初から指摘することができた。10月以降断続した噴火においても、気象庁職員が採取した降灰試料が送付され、同様の噴火活動を継続していることを示すことができた。長野県から御嶽山火山防災訓練における噴火シナリオの設定の依頼を受け、技術コンサルティングを行った。また気象庁より、火山活動評価を行う職員に対する研修への協力依頼を受け、火山地質学・地球化学に関する講義等を行った。 【成果の意義・アウトカム】 ・AI(人工知能)を活用した微化石の正確な鑑定・分取システムの開発 地層を構成する堆積物に含まれる多様な粒子の中から、非常に壊れやすく複雑な形態を持つ微化石を、AI(人工知能)を用いて大量に鑑定し、自動的に分取するシステムを世界で初めて開発した。このシステムにより、これまで膨大な時間と労力をかけて人が行ってきた微化石の選別作業を、自動的に高速で行うことができる。このシステムによって、石油探鉱などにおける迅速で高精度な地層解析が可能となり、人材確保や労働時間の軽減にも繋がる。さらに、これまで人の手では難しかった100マイクロメートルにも満たない微化石の分取と集積も可能なので、今回開発したシステムは地層解析技術として新たな道筋を与えるものである。また、微化石に限らず微小な粒子を取り扱う鉱工業や農林水産業、生命科学、医療分野などの検査試験などでも応用が期待される。本成果は、平成30年12月3日にプレスリリースされ、新聞やネットニュースなどで広く紹介された。また、石油資源開発の関連事業者からは、講演や技術コンサルティングの依頼を受けるなど、関連業界での関心の高さが伺える。 ・省エネな粘土系蓄熱材の改良と実用化研究 低温未利用熱を利用した蓄熱システムの構築に向け、優れた性能を有するハスクレイ蓄熱材を開発するとともに、ハスクレイ蓄熱材を用いた実証試験も成功を収め、実用化が可能であること- 44 -

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