平成30年度研究評価委員会(地質調査総合センター)評価報告書
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工場等の低温廃熱の利用は従来から行われているが、100℃以下の低温熱源を利用した蓄熱(熱利用)は、省エネ技術として今もなお強く求められている。そこで粘土系吸着材ハスクレイ(低結晶性粘土と非晶質アルミニウムケイ酸塩の複合体)を改良・利用することにより、100℃以下の未利用熱を利用した蓄熱システムを構築することを目的とする。蓄熱システムに用いられる蓄熱材として、天然に存在す粘土系ナノ粒子を基にハスクレイ蓄熱材の改良に取り組み、改良型ハスクレイGⅠ(100トン/年レベル)及び改良型ハスクレイGⅡ(1,000トン/年レベル)の量産製造技術を確立した。また、改良型ハスクレイGⅡ造粒体を2トン搭載したトラックによる蓄熱システム実用化試験で実用レベルの537 kJ/Lの蓄熱密度(従来の蓄熱材の約2.5倍)を実証した。そして平成30年度には、改良型ハスクレイGⅠを用いた蓄熱材用造粒体の量産製造技術(100トン/年レベル)を確立、1,020 kJ/L(従来の蓄熱材の約4.3倍)の蓄熱密度を有する造粒体の製造に成功した。さらに農業用熱供給及び除湿システムへの展開を図り、ビニールハウスでの熱供給システムの良好な動作確認とともに、除湿による病害の抑制や光合成の促進を確認した。そしてNEDO戦略的省エネルギー技術革新プログラム優良事業表彰の予定である。平成31年度には、これまで開発した定置型/オフライン型蓄熱システムの年間実証試験を通した経済性評価を行い、当該システムの販売を開始する見込である。 ・未利用資源の窯業原料化 瀬戸地方は、日本最大の陶磁器生産地であるが、原料となる良質の粘土の枯渇問題が深刻になっている。当該地域の民間企業・組合等から、低品位な未利用資源「青サバ」の利用技術に係る相談を受け、共同研究を立ち上げ、その利用技術開発に着手した。瀬戸地方における現地調査や文献調査を通じて青サバの賦存状況を明らかにし、数百万トンの可採鉱量を確認した。そして、青サバから水簸(すいひ)によって分離したカオリン質粘土から、磁選により雲母分を除去する技術を確立した。続いて焼成方式等を策定し、青サバが既存原料の増量材(可塑性成分の50%程度)として十分利用可能であることを提示し、業界の原料供給不安の緩和に貢献した。その結果、平成30年6月より、青サバがタイル原料として利用開始(当面200トン/月)に至っている。平成30年度には、原料の枯渇がより深刻な東濃地方(岐阜県東部)で新たな陶磁器原料の探査を開始し、当年度は有望地1ヵ所にて電気探査を実施するとともに、青サバ中のカオリンが鉄を3%以上含有する特異な鉄カオリンであることを解明し、米国鉱物学会発行のAmerican Mineralogist誌に原著論文を掲載した。また、「粘土・粘土資源」をテーマとしてGSJシンポジウムを秋葉原で開催、国内非金属鉱物資源の現状と課題について講演した。ロシア東部のベントナイト資源に関する賦存状況を調査するために、ロシア科学アカデミーと共同研究契約を締結、第1回目の現地調査をシベリア・アバカン市近郊で実施した。その他、非金属資源の一つであるガラス用珪砂の主要産地・愛知県豊田地域の原料枯渇問題に関して、大手ガラスメーカーを交えた協議を開始し、国内珪石・珪砂資源の賦存・生産状況を把握するための現地調査を展開した。平成31年度は、青サバを窯業原料として着実に利用するには品質安定化と低コスト化が課題であるため、プラント規模の処理施設を用いた試験に移行し、不純物除去技術の改善やコスト試算を実施する。また、東濃地方で開始された新たな陶磁器原料の探査を継続するとともに、青サバ等から珪砂(石英分)を分離・精製する技術開発を開始する。 ・海底曳航式システムの開発 日本の海底鉱物資源広域調査を推進するため、また、それ以外の様々な用途に資するため、革新的な分解能の海底下地質構造調査を可能とする新しい調査技術開発に着手した。深海曳航式のマルチパッケージシステムの構築であり、その目玉が海洋地質図作成のために最も基礎的で、有効なデータ取得となる反射法音波探査の高分解能化を目指したシステムの構築である。深海で曳航できる受波システムであるマルチチャンネルストリーマシステムの開発を平成28年度から開始した。開発が進み、平成30年8月にはストリーマケーブルのテスト航海を、より実用に近い海底カルデラ域で実施し、水深1,000 mを超える実海域で深海曳航データの取得に成功した。データは従来の海面曳航式のケーブルと比較して、詳細な地質構造が取得できることを確認できた。同時に曳航体には計量標準との領域融合になる新しい塩分センサーも搭載し、実海域でのデータ- 42 -

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