平成30年度研究評価委員会(地質調査総合センター)評価報告書
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(3)「橋渡し」研究後期における研究開発 【背景・実績・成果】 「橋渡し」研究後期については、GSJとして主に民間企業からの資金提供によって運営している研究事業を指す。民間資金の獲得が困難な地質調査業務においても、平成30年度に引き続き、企業との共同研究を多数展開するとともに、技術コンサルティング事業の増加を図り、より多くの民間企業への研究協力を推し進めた。全体の民間資金獲得額は3.7億円(平成30年12月末時点)。 特筆すべき成果として、以下の研究項目が挙げられる。 ・AI(人工知能)を活用した微化石の正確な鑑定・分取システムの開発 ・省エネな粘土系蓄熱材の改良と実用化研究 前者では、民間企業と共同で人工知能(AI)を導入した微化石の自動鑑定・分取システムの開発を世界で初めて行い、特定の微化石の分取と集積を長時間、自動的に行うことを可能として、地層解析の効率化を実現した。また後者では、優れた粘土系吸着剤であるハスクレイの蓄熱性能を100℃以下まで利用可能温度を拡大する技術開発に成功し、さらに実用化試験として高性能な蓄熱システムの実証試験に成功した。 以下に個別の研究開発について記述する。 ・AI(人工知能)を活用した微化石の正確な鑑定・分取システムの開発 資源探鉱や地質災害への対策など、現代社会には地層の解析を必要とする場面が多々見られる。地層中に含まれる数マイクロメートルから数ミリメートルの大きさの生物の化石「微化石」は、地層の年代や当時の環境などを解析するために有効なツールのひとつがである。GSJは、多数の微化石専門技術者を配置し、海洋や陸上の調査によって多くの知見とデータを蓄積してきた。しかし、微化石は複雑な形態を持つため、これまでは熟練した微化石の専門技術者が長時間かけて顕微鏡下で微化石を1つずつ手作業で鑑定していた。さらに微化石の微量元素組成や同位体比組成を測定するには、顕微鏡下で大量の微化石を1つずつ拾い上げて、専用の試料台に整理して再配置する必要があるため、専門技術者でも相当な時間と労力がかかっていた。このように、専門技術者が微化石を顕微鏡下で1つずつ鑑定し、分取する地道な作業は微化石による地層解析が始まってから50年以上ほとんど変わっていない。本研究では、微化石を用いた地層解析技術の革新を目指し、大量の微化石を種レベルで鑑定・分取できるシステムを開発した。GSJが主導して微化石の鑑定・分取技術を自動化する基本システムを設計し、NECのAI技術、マイクロサポートの精密なマイクロ・マニピュレーション技術、三谷商事のイメージング技術を融合することで90%以上の微化石の鑑定精度と分取の高速化を実現した。平成30年度に実機が完成してテスト運用を開始し、8月に特許出願、12月にはプレスリリースを行なった。 本システムは、顕微鏡部、AI部、マイクロ・マニピュレーター部で構成されている。AI部の学習アルゴリズムには、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network; CNN)を搭載したディープラーニングのソフトウェアを採用したことで、これまでの機械学習では困難であった複雑な形態の微化石を迅速、正確に鑑定することが可能となった。これらの複数の機能を有する総合的なシステムの開発により、顕微鏡のステージ上の試料台に散布した多数の粒子の画像を取得し、そこに含まれている微化石をAIによって鑑定し、それらを破壊することなくマイクロ・マニピュレーターで分取することを自動で、連続的に行えるようになった。従来、単一種の微化石1,000個体の鑑定と分取には、専門技術者が数日を要していたところを本システムの活用により3時間程度で行うことができる。それによって、特定の微化石の分取と集積を長時間、自動的に行えるので、地層解析の効率化が可能となる。平成31年度には、同システム1台を追加導入することで、調査研究の更なる加速を図る。新規導入するシステムでは、顕微鏡の画像解像度と分取効率を向上し、より効果的なシステムを構築する。また、微小な粒子の扱いに長けているというシステムの特長を活かした社会での汎用的な活用を目指し、鉱物や火山灰などの微化石以外の粒子についても、このシステムの有用性を検証する。 ・省エネな粘土系蓄熱材の改良と実用化研究 - 41 -

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