平成30年度研究評価委員会(地質調査総合センター)評価報告書
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・地層処分沿岸域調査 高レベル放射性廃棄物の地層処分事業に関連して、沿岸域の地下水に関する経済産業省委託研究を継続して担当している(平成30年度公的外部資金直接経費:2.4億円)。平成19年度からは地下水流動の活発な地域(駿河湾)と活発でない地域(幌延)での詳細な地下水研究を実施し、両極端な地域の地下水流動概念モデルを構築するに至った。平成27~30年度調査ではこの知見を基に、全国沿岸部深層の場の理解と地下水流動の推定を目的とし、深部地下水の採取及び水質、同位体年代の分析を実施した。平成30年度は、全国で90試料の地下水を採取し、その内47試料の分析結果によると、沿岸部深層では9割がCl-濃度が海水より低くく、6割が氷期降水と化石海水であることが判明した。すなわち、海の近傍であるにもかかわらず、概して地下深層では海の水は陸側に入り込んでおらず、ほとんどの地域で海水よりも薄い塩水が分布している。そして、その地下水は涵養してから2万年以上経過したものである。さらに、堆積岩地域には化石海水が、火山岩地域では現降水が卓越する傾向が見出された。平成31年度は、さらなるデータの拡充を行い、沿岸域の地下水性状の把握し、概念モデルを確立する見込である。 ・カリ長石を用いたOSL年代測定法の確立と隆起速度評価手法への適用 放射性廃棄物の地層処分の観点から、埋設地と地表との離隔距離を減少させる自然事象である隆起運動や侵食・削剥作用の評価が求められている。GSJでは、隆起速度の定量的な見積りを目的として、5~数10万年前の年代に適用可能なカリ長石を用いたOSL年代測定法を導入し、海成段丘の形成年代を直接的に決定可能とした。平成29年度までに、青森県上北平野を対象として、カリ長石のOSL年代測定を実施し、過去12.5、22、32、40万年前に形成された海成段丘について対比可能であることを確認した。また、堆積層解析に基づく古海面高度の決定により、従来の隆起量評価が数m程度過剰であったことを明らかにした。これらの結果は、原子力規制委員会「中深度処分における廃棄物埋設地の位置に係る審査ガイドの骨子案」に反映された。平成30年度は、OSL年代測定の前処理におけるカリ長石の抽出・濃縮法を検討し、従来よりカリ長石を濃縮する最適な比重分離条件を決定し、手順を確立した。平成31年度には、青森県上北平野から下北半島東部全域にかけて調査範囲を拡大し、評価地域に代表的な隆起速度を得るための空間スケールを明らかにする見込である。 ・火山ガス・火山灰の迅速観測手法の開発 近年の火山噴火対応において、(1)水蒸気噴火に関与する熱水系の変動検知のための火山ガス観測の必要性、(2)火山灰の評価による噴火タイプの判別の重要性、が認識されるようになった。そこで、GSJでは、火山ガス組成の連続観測装置の開発及び火山灰の迅速評価手法の開発を進めている。平成29年度までには、火山ガス多成分組成・自動観測装置(改良型Multi-GAS)の開発を進め、装置の小型化・パッケージ化と繰り返し観測・データ転送の自動化、簡易解析後のデータの準リアルタイムでの閲覧(ウェブ更新1回/日)を実現した。また、防災科学技術研究所と共同で、野外で火山灰画像を自動取得・データ転送する装置を開発し、迅速な火山灰情報の取得を可能とした。平成29年10月の霧島山新燃岳の噴火や硫黄山の活発化にも対応し、周辺における緊急観測を開始した。(内閣府SIP事業の一環;内閣府プレス発表、平成29年11月10日)。平成30年度には、4月19日に発生した霧島山硫黄山の小規模な水蒸気噴火に先立つ火山ガス組成の急激な変化を改良型Multi-GASの連続観測により検知し、本装置を用いた火山ガス連続観測に基づく火山噴火前兆現象の把握の可能性を実証した。また、噴火タイプごとの火山灰試料の光学顕微鏡画像と元素組成マップの特徴の比較・分類を行い、火山灰光学画像の準リアルタイム解析による噴火様式の判定を行うための指標を作成した。本項目では、目標設定後に内閣府SIP事業に追加採択が決定し、計画が飛躍的に進展し、当初予定していなかった、改良型の火山ガス観測装置や火山灰画像迅速解析のための指標などの開発を達成した。平成31年度には4火山において、火山ガス連続自動観測システムの設置が実現する見込であり、火山灰に関しては噴火推移が明確な近年の50噴火の試料について顕微鏡画像の整備が完了する予定である。 【成果の意義・アウトカム】 - 37 -

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