平成30年度研究評価委員会(地質調査総合センター)評価報告書
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(2)「橋渡し」研究前期における研究開発 【背景・実績・成果】 「橋渡し」研究前期については、民間企業にはまだ着手できない国が先導すべき段階にある研究開発や、国として推進すべき研究手法の整備等が該当し、GSJでは各省庁や自治体などからの公的外部資金で実施している研究事業を主に指す。委託元としては、経済産業省またその所管の独立行政法人をはじめ、文部科学省、原子力規制庁等が挙げられる。なお、「橋渡し」研究前期の定量的目標は実施契約件数であるが、平成30年12月末時点で目標値の16件を達成している。 主な研究開発の特筆すべき成果として、以下の研究項目が挙げられる。 ・深部流体の起源・広域分布に関する調査・研究 ・火山活動の長期評価と巨大噴火に関する研究 深部流体の起源・広域分布に関する調査・研究では、地下水の長期安定性評価のため、地下水に含まれる深部流体を検出するための指標の提案と、日本全国における詳細な深部流体上昇地域の把握を行った。火山活動の長期評価と巨大噴火に関する研究では、長期的な火山活動の可能性をより定量的に評価するための評価基準・指標、火山活動モニタリング評価基準・指標に関する知見を整備することを目的として、長期火山活動履歴調査を実施した。 以下に個別の研究開発について記述する。 ・高周波電気探査を用いた埋設水道管腐食リスク評価技術に関する研究 我が国の水道管は、設備の老朽化が進行しており、設備更新が急務である。その一方で、設備更新のための費用には限度がある。そのため、埋設水道管の更新優先度決定のための効率的な調査法が望まれている。吸水性・保水性・耐摩耗性に優れたPVA(ポリビニルアルコール)を用いたローラー電極を開発し、アスファルト舗装面上から地下の比抵抗調査を可能とする装置を開発した。また、当該装置は位相同期検波による信号検知を採用しており、微小な信号検知と高いノイズ耐性を実現し、市街地での調査を可能とした。平成29年度中には、従来よりも高ダイナミックレンジの電位計測(直流の電気探査の数十倍)が可能で、高い計測再現性(偏差5%以内)を実現した。平成30年度は、静岡県企業局の協力の下、当該技術を径が大きい工業用水配管に適用する実証試験を実施してその適用性を確認した。さらに当該技術の民間移転に関する活動を知財等の産総研内関連部署と連携し推進した。平成31年度には、民間企業との共同研究の下に当該装置の改良を図り、信頼性や使用性の高い第二号機の開発を実施する。 ・ドローンを利用した物理探査技術に関する研究 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクトにおいて土砂災害で埋没した車両の遠隔探査を目的として、民間企業および産総研情報・人間工学領域と連携してドローンを利用した空中電磁探査システムを構築した。実際に車両が埋設された実験サイトで、深度1.5 mの埋没車両の探知に成功し、深度3 mの車両についてもやや不明瞭であるが探知可能であることを実証した(関連特許出願1件、プレス発表1件、新聞等報道15件)。平成30年度には、構築したシステムの地盤・土壌調査への適用検証のために農業・食品産業技術総合研究機構の実験圃場で計測実験を実施し、水田と畑の水分の違いによる比抵抗分布の差異を明瞭に把握できることを確認した。さらに民間企業を対象に当該システムによる飛行計測の見学会を開催し、連携先を模索した。平成31年度には関連特許出願および論文公表を進め、また磁気センサーを吊り下げた磁気探査への展開も試み、さらに民間企業や他研究機関との連携強化も図る見込である。 ・深部流体の起源・広域分布に関する調査・研究 地下水の長期安定性評価のため、地下水に含まれる深部流体を検出するための指標の提案と、日本全国における詳細な深部流体上昇地域の把握を行った。放射性廃棄物の地層処分にとって、深部流体(地下300m以深に存在する非天水起源の流体)の混入による地下水の酸性化(低pH、高炭酸濃度化)は好ましくない。しかし、この深部流体が、どのような化学性状を持ち、どれぐらい地表付近まで上昇してきているかは、まだ明らかになっていない。そこで、(1)日本列島全域の地下水の化学性状の実態把握、(2)地下水に混入している深部流体の検出手法開発、(3)日- 34 -

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