平成30年度研究評価委員会(地質調査総合センター)評価報告書
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未利用の石炭や枯渇油田の残留原油をメタンに変換し、天然ガスとして回収する増進エネルギー回収技術の可能性を示す重要な発見である。特に、原油炭化水素を効率的にメタンに変換する微生物コミュニティを東北地方の油田から獲得したことは、枯渇油田に本微生物コミュニティを注入し、地下に残った大量の原油をメタンに変換し天然ガスとして回収する新たな資源技術の創成への道を開くものである。 ・複合汚染の完全浄化を目指した研究開発 クロロエチレン類を完全分解可能な唯一の微生物である嫌気性デハロ菌が好気環境でも生息可能との発見により、これまで困難とされていた有機系化合物複合汚染の浄化が可能となり、浄化事業促進への寄与が期待される。また、新規法規制物質であるクロロエチレンの分解挙動に関する知見は行政の規制施策に利用されるため、社会への貢献にも繋がる。 ・応力マップの整備と地震規模・発生評価 10 kmメッシュという、これまでのおよそ3倍の高分解能での地殻応力マップができたことにより、将来発生するマグニチュード6クラス以上の地震の最大規模や発生様式の評価が可能となった。さらに粘弾性応答を高速計算するアルゴリズムの開発は列島規模地震発生サイクルシミュレーションへの展望を開くものであり、応力マップも活用することで、信頼性の高い地域の地震ポテンシャル評価への道が開け、安全安心な社会の実現に貢献する。 ・超臨界地熱発電技術の研究開発 本研究開発に参画している研究者は、2050年以降に超臨界地熱資源による国内発電総容量を数10GW程度にすることを目標にしている。これが達成されれば二酸化炭素排出量の大幅な増大が期待できる。超高温の地熱資源開発は他国でも注目を浴びているため、我が国が先導して研究開発を行うことにより超臨界地熱資源開発・発電技術分野における市場競争力の確保も期待できる。 ・サンゴとサンゴ礁に関する研究 サンゴとサンゴ礁に関する研究に関係して、平成28年度に1件、平成29年度2件、平成30年度2件のプレスリリース等の成果公表を行った。IF付国際誌での論文発表も多数行われている。最近では、サンゴとサンゴ礁に関する学術的な研究に留まらず、サンゴ実験手法の高度化にも取り組んでおり、サンゴ飼育技術の特許出願などを通じ、民間への橋渡しが期待しうる。 ・走査型磁気顕微鏡の開発と運用による成果と国際展開 SQUID顕微鏡開発にともなって出願した特許2件は、平成30年度に取得・公開された(特許6311188、特許6421396)。このうち1件はSQUID顕微鏡本体に関するものであり、もう1件は光学画像と磁気画像の重ね合わせに関するものである。論文成果のうち、鉄マンガンクラストの年代推定については、海底鉄マンガンクラストの同位体年代推定法にかわる迅速な年代推定法として発展させることにより、海底鉱物資源の評価への貢献が期待される。また、野島断層の断層ガウジの微細構造と磁気イメージから、高速滑りにともなう温度上昇が示唆されたが、断層ガウジの磁気画像による断層活動履歴の復元への貢献が期待される。深成岩中の磁性鉱物について、磁気画像から磁化モデルの作成に成功したが、非磁性鉱物に囲まれた数mmサイズの磁性鉱物(あるいは非磁性鉱物に含まれる微少磁性包有物集合体)について、複数の地質イベントに対応した磁化方位・強度を各鉱物粒子についてそれぞれ復元できる可能性を示した。また、英国(サザンプトン大学)、米国(ロチェスター大学)、韓国(国立極地研究所)、ノルウェー(ノルウェー科学技術大学)の4カ国と走査型SQUID磁気顕微鏡を用いた国際共同研究を進めている。このうち1件はJSPS欧米短期、2件はJSPS招聘短期の支援を受けて行ったもので、その後も共同研究が続いている。特に、サザンプトン大学とは密な連携を進めつつあり、英国自然環境研究会議(NERC)による教育研究プログラムINSPIREの研究テーマ”The causes and consequences of geomagnetic exursions”による卓越大学院生を英国から受け入れる予定である。研究レベルの高い複数の国際拠点との共同研究の継続と発展は、産総研および日本の研究レベルの向上につな- 31 -

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