平成30年度研究評価委員会(地質調査総合センター)評価報告書
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体内のpHが変化して骨格成長が促進されることを発見した。これは、サンゴ骨格形成メカニズムや、ひいては広大なサンゴ礁が形成される仕組みの理解にも寄与するものである。また、世界遺産のグレートバリアリーフ海域における科学掘削により得られた最終氷期最盛期のサンゴ化石の放射性炭素年代測定値から、最終氷期最盛期における海水準変動の詳細が復元された。 ・走査型磁気顕微鏡の開発と運用による成果と国際展開 地層・岩石に保存された地球磁場記録を活用して地層の履歴を解明可能であり、これは古地磁気学・岩石磁気学として知られている。走査型磁気顕微鏡を用いてサブミリメータスケールで分析することにより、残留磁化と各磁性鉱物を直接結びつけることが可能となり、地層の履歴を詳細かつ精確に知ることが期待される。最終目標は、研究/実用目的の磁気顕微鏡システムの開発・改良を行い、世界に提供できる磁気顕微鏡について橋渡しを行うことである。これまで目的達成のために、科研費補助金基盤研究(A)「SQUID顕微鏡による惑星古磁場の先端的研究の開拓」(平成25~28年度)の支援を受けて、超伝導量子干渉素子(SQUID)を用いた走査型SQUID磁気顕微鏡の開発を金沢工業大学と共同で行い、平成27年度から運用に成功している(平成29年度までの特許2件、開発論文2件、応用論文2件)。平成30年度には、ダナイトおよびそれが蛇紋岩化した岩石中の磁性鉱物(クロム鉄鉱など)について、磁性鉱物の磁気画像の取得とモデル計算を行い論文発表を行った。 ・海外卓越研究員招聘事業による磁性分野先端的研究の展開 海外卓越研究員招聘事業「磁気記録と気候変動研究における機械学習手法の開発」 (FORCaist)は、平成29年度予算により2月から予算執行された。平成30年2月に準備のためにプロジェクトリーダーのRoberts教授(海外卓越研究員)を招聘し、オーストラリア国立大学とクロスアポイント契約を結び、平成30年4月からRoberts教授を含む4名の特定フェローによる研究活動を開始した。また、ケンブリッジ大学とインペリアルカレッジロンドンからそれぞれ1名招聘したが、これに日本人ポスドク1名および受入担当者(小田啓邦; 地質情報研究部門)と協力者(赤穂昭太郎; 情報人間研究部門)を加えた計9名が実質的なプロジェクトメンバーである。THE世界大学ランキング2019発表によると、オーストラリア国立大学・ケンブリッジ大学・インペリアルカレッジロンドンはいずれも上位で、プロジェクトメンバーの研究レベルは高い。FORC法は、磁気ヒステリシスループ内部を掃引した磁化データを2次微分して描画することで磁性物質の磁化逆転過程の詳細をFORC図として可視化する手法である。本プロジェクトは、FORC法によって天然・人工磁性物質の磁化過程の理解を深め、これを活用して磁気記録・気候変動研究の推進を行うことが目的である。このために、機械学習を用いてFORC法の計算の自動化・高度化と客観性確保を行うことを第一目標に、FORC測定の精度向上、FORC測定の実データ・理論計算データの取得とDB化、FORC法を用いた応用研究を行った。なお、オーストラリア国立大学はFORC法の研究推進拠点となっており(Roberts教授が世界をリード)、ケンブリッジ大学のHarrison教授とインペリアルカレッジロンドンのMuxworthy博士もFORC法の研究を開拓してきた。GSJも古地磁気学・岩石磁気学の研究にFORC法を活用してきたが、本プロジェクトにより世界トップと肩を並べることになる。地球惑星科学で扱う天然試料は未知の磁性鉱物を複数含むが、FORC法の活用(特に最先端の知識)により、高い信頼性をもって磁性鉱物の起源と磁化獲得時期を知ることが可能となる。本研究の論文成果は、出版済1編、投稿中1編である。出版済のものは、鉄マンガンクラスト中の走磁性バクテリア起源の磁鉄鉱を発見したものであり、FORC法によってよく分散した単磁区磁鉄鉱粒子を特定することができた(Oda et al., 2018)。さらに、平成31年1月上旬に産総研所内でプロジェクトメンバーによる論文執筆セッションを1週間行い、7編の主要論文執筆を進めた。 【成果の意義・アウトカム】 ・微生物によるメタン生成に関する調査・研究 様々な油ガス田の地下環境に棲息する微生物が根源有機物をメタンに変換するポテンシャルを有すること、また独自の微生物メタン変換促進剤によりその機能が賦活化されることは、深部- 30 -

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