平成30年度研究評価委員会(地質調査総合センター)評価報告書
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収まった。平成29年度には、安定同位体プロービング技術による複合汚染分解微生物の新規発見の国際誌公表に至り、環境研究総合推進費による新規法規制物質であるクロロエチレンの分解挙動の評価にも開始した。平成30年度には、クロロエチレンの分解促進と阻害要因を解明するとともに、親物質及びその他の物質が共存した複合汚染条件下での分解特性を評価した。平成31年度には、新規法規制物質であるクロロエチレンの分解速度に係る知見と取りまとめ、行政施策に反映させる。 ・応力マップの整備と地震規模・発生評価 将来発生する地震の最大規模や発生様式の予測精度を高めていくためには、高い空間分解能を持つ応力マップの作成が急務の課題である。そのためには可能な限り小さな地震を活用することが鍵であったため、独自に微小地震(マグニチュード1以上3未満)の解析手法の開発に取り組み、平成29年度までに発震機構解(どのような断層運動が起こったのかを示すもの)とマグニチュードを推定する手法を確立させた。平成30年度には3次元アレイによる微弱信号検出と震源決定法の開発にも成功し、マグニチュード1を下回る地震の活用も視野に入り始めた。これまで独自に解析してきた微小地震の発震機構解と気象庁発表のマグニチュード3以上の地震の発震機構解を統合し、平成29年度に関東地域の 10 kmメッシュの応力マップを纏めた。これは、先行研究のおよそ3倍の空間分解能に相当する。このマップを活用した研究成果としては、マグニチュードも含めて2014年長野県北部の地震(M6.7)の動的破壊過程を再現したことが挙げられる。これにより、他の断層帯においても同様のアプローチにより最大規模評価を行う展望が開けた。その後、関東地域での経験を踏まえ、平成30年度には中国地域の10 kmメッシュの応力マップを試作した。平成31年度にはマップを公表できる見込である。平成30年度は地震の発生評価に向けた研究にも取り組んだ。2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震(M6.7)の直上には石狩低地東縁断層帯が存在しており、予察的に作成した応力マップから、現在の応力場で動きやすい断層に属していることが判明した。現実的な地下構造(粘弾性構造)を設定し、今後20年間にわたる地震の影響を定量的に評価することに成功した。さらに大規模地震発生サイクルシミュレーションの実現に向け、粘弾性応答を高速計算するアルゴリズムの開発にも成功した。本課題についてはIF付国際誌に7件発表した(さらに2件査読中で平成30年度内に受理見込)。 ・超臨界地熱発電技術の研究開発 海洋プレートの沈み込みに伴い海水が巻き込まれ高温高圧条件下で超臨界地熱として存在することが明らかになりつつあり、これを熱源とする超臨界地熱発電は、2050年以降の我が国のベースロード電源の一翼を担うことが期待され、内閣府が策定したエネルギー環境イノベーションにおいても重要な研究課題の一つと位置付けられている。GSJは国内研究者を取りまとめ、リーダーシップを執って、平成27年に超臨界地熱発電の可能性検討を行い、東北地方を中心に超臨界地熱資源を用いた商用発電が可能なことを見出した。その後、詳細実現可能性調査を行い、平成28年度には一地点で100 MW以上の超臨界地熱発電について、経済性を確保しつつ実現の可能性があることを示した。さらに平成30年度から試掘へ向けた事前調査を開始した。平成31年度は、引き続き2020年度末までに試掘有望地点の選出と、そこでのエネルギー量等の詳細評価を実現する予定である。 ・サンゴとサンゴ礁に関する研究 地質情報研究部門海洋環境地質研究グループでは、地球環境問題(温暖化、海水準上昇、海洋酸性化等)に関係する地質学的諸現象の解明の一環として、サンゴ及びサンゴ礁を対象にした研究を実施している。サンゴ骨格は過去の気候や環境を記録する媒体としてたいへん優れている。この長所を活用して、地球温暖化や海洋酸性化の変遷を解明する研究を実施してきた。また、サンゴ骨格の化学分析より、石灰化機構を明らかにすることは、近年問題になっているサンゴ白化現象の解明に資するものである。さらに、海面指標となるサンゴ化石及びサンゴ礁地形に注目して、海水準変動に関する研究を実施して、今後の海面上昇に関する知見を収集して、将来の気候変動予測の高度化に貢献する。科学研究費補助金を獲得しての研究が実施されてきた。平成30年度には、稚サンゴを用いた飼育実験により共生藻の役割を検討し、共生藻の光合成によりサンゴ- 29 -

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