平成30年度研究評価委員会(地質調査総合センター)評価報告書
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3.「橋渡し」のための研究開発 (1)「橋渡し」につながる基礎研究(目的基礎研究) 【背景・実績・成果】 「橋渡し」研究について、GSJではこれを広くとらえ、国の判断等に貢献する資源や環境及び防災等に資する研究を「目的基礎研究」、また省庁他の公的機関と連携しながら公的資金の活用により間接的に成果を民間へ渡す「橋渡し研究前期」、さらに直接的に民間と連携する「橋渡し研究後期」に分類すると位置付けている。「橋渡し」研究における平成30年度の論文数は今年度目標140件に対して、91件(内、IF5以上の国際誌論文5件)、論文の合計被引用数は今年度目標1,800に対して2,046である(平成30年12月末時点)。一方で、GSJの研究成果については、その成果を国内の事業者・自治体が利用することも多いため、国内誌への発表も重視している。地球科学分野で代表的な学術誌である「地質学雑誌」には43論文に165件の、「地学雑誌」には、45論文中に29件のGSJ出版の論文等が引用されており(平成30年12月末時点)、GSJのプレゼンスの高さを示している。 「橋渡し」につながる目的基礎研究の特筆すべき成果として、以下の研究項目が挙げられる。 ・メタン生成菌のメタン生成活性に関する研究 メタン生成菌コミュニティの安定培養手法を確立し、地下の原油をメタンに変換する新たな資源技術を開拓した。。IF付国際誌16件発表、特許2件出願と実績も申し分ない。 以下に個別の研究開発について記述する。 ・微生物によるメタン生成に関する調査・研究 燃料資源として重要な天然ガスの約20%は微生物起源と推定されている。しかしながら、石炭・ケロジェン・原油などの根源有機物がメタンに変換されるメカニズム(反応経路や関与微生物)の詳細はほとんど未解明である。民間資金共同研究3件、受託研究1件、科研費等助成金研究9件の下、多様な油ガス田を対象に本メカニズムを明らかにし、天然ガスの成因解明・資源量評価に貢献するとともに、関与微生物の機能を賦活化することによって天然ガスの増産やエネルギー増進回収に導く資源技術の創成を目指している。平成27~29年度は、国内油田から分離したメタン生成菌Methermicoccus shengliensisがメトキシ芳香族化合物をメタンに変換する機能を見出し、新規メタン生成経路を半世紀ぶりに発見した。またこのメタン生成菌が単独で石炭をメタンに変換する活性を検出した(IF付国際誌1件、Mayumi et al, 2016, Science, 平成29年度産総研論文賞受賞)。平成30年度は、東北地方の油田の地層水の高圧培養で芳香族炭化水素をメタンに変換する微生物コミュニティの安定培養を確立した。また、その微生物コミュニティの網羅的遺伝子解析を実施し、その反応経路と関与微生物を解明した。さらに、本研究で独自に開発した「微生物メタン変換促進剤」を同油田の地層水に添加することで、より効率的に炭化水素を分解しメタンを生成する微生物コミュニティを獲得した。次に、南関東ガス田におけるヨウ素回収後の地層水(硫酸イオンや溶存酸素に富む廃かん水)の再圧入に伴い、硫黄代謝とメタン酸化に関与する細菌・古細菌が地層水中に増加することを発見し、人為的な環境変動に対する地下微生物群集の応答事例の解明した。当該年度にIF付国際誌に4件発表した。平成31年度には油層微生物コミュニティによる原油メタン変換メカニズム(反応経路と関与微生物)の解明、微生物コミュニティの大量培養技術の開発と安全性評価を実施するとともに、国内初となる原油メタン変換回収技術に係るフィールドテストの実施(計画中)に向け、現場適用技術の検討を進める。 ・複合汚染の完全浄化を目指した研究開発 トリクロロエチレン等に代表されるクロロエチレン類による汚染は国内だけで10数万ヶ所以上潜在し、大きな社会問題となっている。環境微生物を利用した浄化は環境に優しくかつ安価であるため、脚光をあびているが、複合汚染への適用は困難とされていた。平成28年度には、国内複数汚染サイトの試料の分析結果よりクロロエチレン類を完全分解可能な唯一の微生物である嫌気性デハロ菌が好気環境でも生息可能であることを発見し、複合汚染の分解実験にも成功を- 28 -

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