平成30年度研究評価委員会(生命工学領域)評価報告書
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・いよいよ橋渡し研究が本格化した,と高く評価できる段階にある。独自性の高い技術を多く持つ本領域だけに,この流れが定着しつつある状況は,今後に大きな期待を持たせるものである。 ・3Dプリンティング技術による人口歯は、材料技術、製造技術を基盤として実用化に成功した立派な成果物である。産総研の地力を感じる成果であり、保険適用を目指すと共に、本技術を幅広い対象への実用化に展開してもらいたい。 (改善すべき点及び助言) ・橋渡し研究後期における価値創出のロジックについては、本来、最終年度より前(すなわち平成30年度)に生命工学領域として強く主張しておく必要がある。最終年度に発言しても言いっぱなしになる懸念大。ぜひ、本年度の最終成果まとめに際して、何らかの修正指標を提示すべき。 ・産総研発ベンチャーが立ち上がっているが、その経緯などを良く解析し、計画性のある継続できる方法論を整理しておくべきと考える。橋渡し前期以上に後期における研究成果の社会実装に向けた具体的な取り組みが求められるが、十分に考えられているのかどうかは不明確である。目利きなどのコーディネーターの配置を推進・増強するなど、代表的な成功事例をもとに解析・整理することが重要と考える。 ・独自性の高い技術を多く保有している本領域だけに,民間資金の導入実績,民間企業からの出資等に関しては,より長期な戦略を早く立てるべきであったかもしれない。 ・産総研には、発光イメージングや誘電率顕微鏡、電磁波センシング、酵素活性の無標識イメージングなど、生体分子可視化/観察/センシングに関わる優れた独自技術が蓄積されてきている。加えて、生物発光領域のように、OECD標準化の知見も有している。総合的に見て、生体情報モニタリングのポテンシャルを感じており、フラッシュアイデアでも良いので、ヘルスケア分野の知財確保も考えてもらいたい。昨今、ヘルスケア領域では腕時計タイプの活量度計が国内でも浸透し始めているが、殆どが米国製品であり、日本人の生体情報が米国メーカーのクラウドに吸い上げられつつある。医療とヘルスケアは紙一重のところにあり、活量度計で計測されている生体情報は臨床データと繋がると価値が跳ね上がる。この危機感に国内のセンシング技術が一矢報いるとしたら、産総研しか出来ないのではないか。 3.領域全体の総合評価 【第4期全体(見込を含む)に対して:見込評価】 (評価できる点) ・スマートセル、臓器チップ等が大型国プロ研究にステップアップしてきている。大学連携のOILが立ち上がり、具体的な成果も得られつつある。技術コンサルティング活動による活動が着実に育ち、産総研をHubとする技術支援、事業支援が機能してきた。 ・目的基礎でのマイクロバイオームや共生細菌での大きな成果、橋渡し前期での糖鎖研究、ゲノム編集を用いた鶏種での研究、橋渡し後期では、ロボット技術のバイオ実験応用や3-HBの微生物による大量産生の技術開発において大きな成果を創出した。 ・創薬・ヘルスケア・バイオと幅広い領域を担っているにも関わらず、糖鎖疾患バイオマーカーやマイクロバイオームの精度管理技術の開発、遺伝子編集による適性の高い植物の創生など、意欲的なプロジェクトが数多くあることは、高く評価したい。 ・またその背景には、「スマートセルインダストリー」とも言われるビッグデータを活用した化合物の発見と自動生産も寄与しており、AI時代の生命工学のあり方を示している。ビッグデータの領域は引き続き大きな変化をもたらすと思われるため、該当の領域に人材を輩出するだけでなく、生命工学としてもこの活動に関わる人を配置し、システムの中に組み込むことを検討してほしい。 ・研究の重点化と傑出した優れた研究員の活躍もあって、第4期全体として国際的にも高く評価される成果が多く創出されたと判断できる。その一部は、ハイインパクトな国際誌にも掲載されている。とくに目的基礎研究においては、新たな視点に基づく研究展開と波及効果のある成果創出がなされており、今後、産業面だけでなく学術的な面においても好影響を与えたと考える。とくに共生細菌と昆虫との関係性を明らかにした点は、その研究手法も含め、パラダイムシフトとも言える新たな学術的価値を創出し、将来的な応用研究へ繋がる夢を示すことができたと考える。 ・ベンチャー立ち上げも着実に成功させており、支援技術として開発された汎用作業ロボット「まほろ」の有用性など、次世代の研究作業の可能性を窺わせる先進技術として開発され、実際に企業や病院への導入実績をあげたことは高く評価されるものである。 ・技術コンサルティングを活かした指導助言の実施によって、総額としてはまだ少ないが、着実に民間からの研究費獲得額を向上させた。マーケティングの強化による産業界への橋渡しの潜在的な可能性を示- 90 -

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