平成30年度研究評価委員会(生命工学領域)評価報告書
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・ロボットによる高い正確性と再現性を実現し、それをベンチャー企業として設立して社会貢献につなげている点や、リン酸化アレイ技術による創薬開発とベンチャー「ソシウム」の設立、3Dプリントによる人工歯の短時間の製造とその手法の厚生労働省による承認など、社会実装の場を広げている点を高く評価したい。 ・市場化は一つの出口戦略なので、例えばベンチャー設立による共同研究費の獲得額も視野に入れ、全体として民間資金獲得とすることも検討すべきだと感じる。 ・産総研発ベンチャーも着実に立ち上がっている。これまでに汎用性作業用ロボット「まほろ」の開発ならびに企業や病院等への導入を果たし、収入も挙げている。このロボットの作製によって、定常作業としての今後の利用可能性を窺い知ることができ、その有用性をさらに広い分野へ展開できるものと考えている。 ・コバルトクロム合金粉末を使う3Dプリンティングによる人工歯の実用化技術はさまざまな領域に展開でき、あらゆる可能性を秘めた技術開発だと考えている。 ・橋渡しそのものは順調に進展しており,高く評価できる。特に,産総研発ベンチャーの起業に関しては順調である。もともと本領域は個々に橋渡しに対応できる方向性を有している内容も多く,流れが本格化しつつあることを,特に高く評価するべきである。 ・汎用ヒト型ロボット《まほろ》は、これまで国内外で取り組まれてきた実験作業のロボット化技術として、動作が抜きん出て高度である。既存の幹細胞培養などのロボット化の多くは原価低減やスループット向上を謳っているが、本来、その目的で取り組むべきは、《まほろ》が目指す実験精度と再現性、プログラミングの汎用化である。創薬支援プラットフォームとして、高いポテンシャルを感じる。 (改善すべき点及び助言) ・民間からの資金獲得額の目標値と実績値の乖離が大きくかつ乖離の程度は拡大傾向にある。単なる民間共同研究資金獲得という指標に対して、VC投資や、M&Aなどマネタイズによる価値創出のロジックを至急構築する必要がある。 ・社会実装という点では、引き続き課題が残る印象を受けた。ベンチャーも設立はしているものの、限定される機能を提供する傾向があり、より高次で幅広いニーズに応えたり、次々と生まれる印象が弱い。産総研だけでベンチャーを設立するのではなく、製薬業界やヘルスケア産業などともチームを組み、CEOは雇ってしまうなど、いろいろなベンチャーの可能性を考えてほしい。 ・ベンチャー立ち上げと支援の在り方が明確にされていない。ベンチャーをひとつの産総研の出口とすれば、この第4期全体の総括として大きな成果として評価されうるものではあるが、目的基礎研究から、橋渡しの前期・後期と研究の経緯を踏まえた出口・成果(社会実装)の捉え方はもっと大きく、柔軟性をもって臨むことが肝要と思う。 ・今期の大きな成果の一つである「3Dプリンティング技術による人工歯の実用化」は評価されるものであるが、この研究のこれまでの経緯が明らかにされていない。もし、途中からの産総研PJへの参画であれば、この研究の着眼点や具体的な研究戦略を成功事例のひとつとして見直されるべきものと思う。たまたまの大きな成果であれば、組織としては嬉しいが、研究成果創出における再現性やその経緯を学んで整理しておく必要があると思う。 ・産総研でどこまで研究を維持するのか、その判断の在り方が重要であるが、全体的にその研究を民間企業等へ導出する時期が遅いように感じる。企業との連携時期の在り方を考えるべきである。 ・民間資金獲得に関する目標設定に,若干の無理があったことは否めない。冠ラボ設営のような戦略が重要であるが,特に大手とされる企業との連携に数年かかることを意識すべきであった。 ・幹細胞研究においては、イメージングやオミクスなど多種多様なデータが蓄積される。 ・《まほろ》が最終的に高精度・高再現性のロボットとなるには、情報・人間工学領域と連携して、分化の評価や非侵襲性の実現において有用なパラメータを統合的に評価して絞込みを行うことが必須である。本研究はAI技術が腕を奮える具体性があり、一気呵成の取り組みを次期に期待する。 【とくに平成30年度に対して:平成30年度評価】 (評価できる点) ・3Dプリンティング技術を応用し、プリンティング用医療機器としてコバルトクロム合金粉末を厚労大臣より承認を受けた。人工歯の短時間での製造と歯科治療を実現した。 ・民間VCからの資金獲得が拡大した。産総研発スタートアップの一社が大手民間企業の子会社化。 ・コバルトクロム合金粉末を使う3Dプリンティングによる人工歯の実用化技術の将来的な可能性を広く示すことができた。 - 89 -

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