平成30年度研究評価委員会(生命工学領域)評価報告書
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(2)「橋渡し」研究前期における研究開発 【第4期全体(見込を含む)に対して:見込評価】 (評価できる点) ・疾病バイオマーカーや創薬標的として注目される糖鎖バイオマーカー実用化にむけ研究が力強く推進されている。 ・マイクロ臓器チップで、医薬品の動物実験に代わるIn vitro評価系構築で成果。鶏のゲノム編集技術を適用した品種改良で、アレルゲン欠失個体や有用タンパク産生に端緒をつけた。 ・スマートセル事業や、スマートバイオでのNEDO、SIPの大型プロジェクトが始まり、当該分野における最先端研究機関として我が国の産業競争力強化を先導する。 ・特許実施件数で年度ごとの目標を、全年次に渡り大幅に上回って達成。公的外部資金獲得を継続的に増加させた。 ・糖鎖疾患バイオマーカーの開発において業界全体をリードしていることに加え、マイクロ臓器チップの開発ではOrgans-on-a-chipの開発を推進し、今後の製薬業界への橋渡しが期待されるなど、安定した成果が認められる。 ・物質生産という点では、遺伝子編集によりリグニンがなくても直立する茎を生産するなど、今後のバイオマス生産においても期待できる。 ・特許においても、目標値を上回る高い水準を誇っており、今後さらなる発展が期待できる。 ・獲得金額の成果としては参考にしかならない7つの国プロにおいて、それぞれに質・量ともに高い評価を受けるだけの研究が展開され、成果も挙げている。 ・継続的に推進してきた「創薬標的となっている糖鎖バイオマーカーの実用化に向けた研究開発」も、ゲノム編集技術を世界に先駆けてニワトリに適用し、アレルゲンの無い有用タンパク質作製技術を成功させたことは大いに評価されるべきものであり、公的研究機関である産総研としてのステータスを国内外に示す成果と考える。 ・創薬基盤技術の開発,医療基盤・ヘルスケア技術の開発,物質生産技術の開発の3つの重点課題いずれにおいても,各部門の強みを最大限に活かした,橋渡し研究前期が展開できており,高く評価できる。特許実施件数の大幅な増加,公的資金獲得額の増加は,そのことを強く反映しているといえる。 ・スマートセル事業(NEDO)、SIP事業など、産官学が結集する大型の国家プログラムに意欲的に参画し、産総研の微生物、植物、農業、材料、製造技術の研究で得られた幅広い優れた知見を生かして推進していると認められる。農薬、化粧品、食品、医薬品などの物質生産や、従来、エンジニアリングの力が及んで来なかった農業関連産業を出口にしている点に期待したい。コスト低減は、国際競争力の観点で日本が劣ってきた分野だが、技術力で高品質を実現しようとする意欲を感じる。 (改善すべき点及び助言) ・特許実施件数での定量評価軸は、一見妥当にみえるものの個々の特許毎の利益創出の程度、あるいは他機関に対する実施抑止力等の評価が見えず、特許のインパクトを示す指標として適切か疑問に感じる。 ・国のSIP事業としても、産総研が「食」「バイオ」「デジタルデータ」など幅広い領域で受注し展開を見せているが、若干、担当領域が広すぎる印象も受けた。研究員も限られている中で、橋渡し前期という意味でも、多少フォーカスを絞っていいのではないか。 ・多くの国プロ(計7件)をこのステージに位置付けているが、それぞれの研究課題を精査すると必ずしもそうではないように思う。それぞれの国プロが扱う領域の広さからすると産総研のある部門が丸ごと組み込まれ、関連部門の多くの研究者が参画することになる。こうした運用は、産総研が主導的ではない(研究運営を直接管理していない)点を考慮すると、結果によっては極めてリスクの高い研究活動となっているように思う。このステージに関しても、研究開発のスピードを考えると、社会実装を見込んで早目に企業に成果を移譲する方が良いようなケースがあると思われる。その判断基準をより明確にすることは成果を確実なものとするために重要な作業であると考える。また、「橋渡し」研究前期であるがゆえに、出口に向けた取り組み方としては極めて多様で、自由度も高いと思うが、それだけにこのステージにおける研究管理の在り方は重要であると考える。担当する研究者の自由度を最大限維持するとともに、産総研としての効果的な研究資源の投資の是非が問われることになる。 ・社会実装を想定した知的財産創出に向けた戦略的な取り組みが必要だと考えるが、その具体的な内容は明らかになっていない。どのような基準で知財創出の作業をし、それを企業に移譲する際の適切な時期の設定など効果的な方法論が示されていない。 ・民間企業との受託研究に向けた戦略的な取り組みの実際が明らかになっていない。 - 87 -

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