平成30年度研究評価委員会(生命工学領域)評価報告書
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ーションを考えた場合、基礎研究推進による高質な論文の投稿と社会実装に向けた作業のどちらを選択するかは重要であり、定量性のある判断基準を設けることは研究投資の効率化を図る上で必要だと考える。 ・個々の研究者のポテンシャルを最大限に高めうる方向性は高く評価できるものの,目的基礎研究,という観点でのテーマ設定に関しては,ポテンシャルを考慮しつつより具体的な内容が含まれることも重要である。 ・中長期の実用化を目指した流れを具体的なテーマで示したことは高く評価したい。ここで感じるのは、取り組む全てのテーマが、《目的基礎⇒前期⇒後期⇒実用化》のプロセスを進むことは有り得ないという点である。最上流の基礎研究は自由闊達であるべきであるし、社会実装の観点で取捨選択をかけることは研究の深化を失わせる危惧もある。基礎段階の研究テーマは入り口で《選択と集中》をかけることなく、寧ろ《多様化と分散》の精神で引き出しと可能性を沢山持って、意欲的に着手してもらいたい。 【とくに平成30年度に対して:平成30年度評価】 (評価できる点) ・心筋梗塞患部を直接リプログラミングにより再生する遺伝子を発見し、低コスト治療法確立につながる成果を創出した。 ・高IF誌への投稿が増加しており、論文被引用も目標を凌駕して達成した。 ・心筋梗塞患部を再生する遺伝子「Tbx6」の発見は、心筋細胞と血管細胞を安価に安定して複製できることにつながり、将来、心筋梗塞の治療に貢献することが期待されるなど、基礎研究ではありながら大胆な取り組みが継続的に生み出されている。 ・これまでに多くの時間と研究費を投じてじっくりと研究してきたいくつかの主要課題、例えば、共生細菌・昆虫が有する新機能の発見や抗凍結タンパク質の高付加価値化など、今後の応用展開が期待できる果実としての成果が挙がっている。 ・AMEDやNEDO,SIPなどの国の事業にも積極的に参画し、基礎研究としての優れた成果をハイインパクトな国際誌に投稿している。 ・創薬基盤技術の開発,医療基盤・ヘルスケア技術の開発,物質生産技術の開発の3つの重点課題いずれにおいても,特筆すべき成果をあげている。独自性が高いものも含まれており,今後の展開を期待させる。高い目標であった論文数の達成、ならびに論文被引用数の大幅な上昇は特筆に値する。重点課題テーマ設定も適切であった,と高く評価できる。 ・心筋梗塞患部を直接リプログラミングによって再生する遺伝子の研究は、AMED事業として取り組み体制を強化し、確実に進展している。遺伝子導入し分化して得られた心血管系細胞は、治療法の確立のみならず、創薬アッセイへの応用も期待できる優れた成果である。 ・論文の被引用件数が著しく増加し、論文発表数も目標値を超えている。IF10以上の論文が増加したことから、その質が世界的に高いことがわかる。 (改善すべき点及び助言) ・論文発表件数が3年連続して目標未達。既に論文発信力の質・量低下に対する施策を進めているが、悪循環を断ち切るまでには力強くなっていない。 ・長年実施している基礎研究の中で、それをどのタイミングで終了、あるいは方向変換するのか、その判断は難しいと思うが、研究者に依存し過ぎる結果、効率の悪い研究資源(研究費、人件費、時間、装置・設備類)の投資になりかねないと思われる。どの程度の基礎研究が実施されているのか明示されていないが、その研究テーマの棚卸は頻度良く実施することを期待する。研究テーマの公開や企業への早目の展開を考えることは必要だと思われる。 ・代表的な成果に関して,先鋭的な内容が含まれていることは高く評価できるものの,橋渡しにつながる可能性がより多く含まれてもよい,と感じられる。強みのある分野に関しては,特に目的基礎研究においても高い成果を期待したい。 ・マイクロバイオーム、細菌叢と疾患との関連を探るには、サイエンスと臨床医療にまたがる膨大な情報解析が必須となる。特に腸内細菌叢に関しては、高齢化社会の行く末を左右する重大な可能性が判明しており、データベース構築だけでなく、産総研の知を結集したインフォマティクス/データマイニングの進展を期待する。 - 86 -

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