平成30年度研究評価委員会(生命工学領域)評価報告書
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ンドデザインとアクションプランを描くことを提案したい。「エコシステムの実現」をその具体的な戦略とあわせて掲げ、積極的な取り組み状況を分りやすく示すことを希望する。 ・広範な分野に関するポテンシャルを最大限に活かした運営が順調に推移している中で,民間資金獲得,論文発信に向けた施策が戦略的に展開されているものの,これらについては長期的かつ戦略的な取り組みが必須であり,具体的実績の蓄積に向けた積極策の継続を強く期待したい。 ・女性の研究者採用が進んでおり、次のステップである《リーダー(管理職)を担える人材》の成長を目指せる段階である。生命工学領域は女性の優秀な研究者の母集団が他領域よりも多く、管理職へのアサインを思い切って進めてもらいたい。 2.「橋渡し」のための研究開発 (1)「橋渡し」につながる基礎研究(目的基礎研究) 【第4期全体(見込を含む)に対して:見込評価】 (評価できる点) ・マイクロバイオーム解析の精度・安定性を評価するための人工核酸標準物質と精度管理技術を開発し、診断用マーカーや創薬ターゲット開発分野の学術領域を世界的に先導している。 ・共生細菌が宿主昆虫の代謝、性別、農薬分解等を制御する機構を発見し、いくつもの学術的なパラダイムシフトを起こした。 ・共生細菌の生物機能解明において、様々な昆虫を用いて、生命の維持や特殊機能出現の仕組みを解明したり、マイクロバイオーム解析において広範なテストを実現できる基盤を作るなど、業界を牽引する動きをしている。また基礎研究の影響力を表すものとして、論文、特に被引用件数が伸びており、高く評価したい。 ・創薬基盤技術の開発、医療基盤・ヘルスケア技術の開発、生物機能活用による医薬原材料等の物質生産技術の開発、いずれの領域においても、国際的にも高く評価される成果が数多く着実に創出されている。また、その成果の一部は、ハイインパクトジャーナルへの掲載や国内外での学会等で積極的に紹介されており、波及効果のある優れた研究を推進していると判断できる。 ・現在話題となっている再生医療やマイクロバイオームなどの状況を踏まえたニーズ性の高い研究や技術開発をはじめ、当該領域が優先性を維持している共生細菌が有する新機能などの新たな切り口によって学術面においてパラダイムシフトを起こすなど、研究領域も大きく広げて研究を推進しており、橋渡しに繋がる目的基礎研究としての位置づけを明確にしている。 ・これら成果の多くは、研究員の優れた研究資質に基づく高い研究遂行力と努力の賜物であり、それら研究を牽引する傑出したシニア研究者に依存したものと思われる。 ・論文の発表数の維持と質の向上,被引用回数の増加など,総じて高く評価できる。権威ある賞を数多く受賞,国家プロジェクトの採択と実施など,特筆すべき成果も多く,しかも,橋渡しにつながる可能性を持つ内容も評価できる。 ・強みを活かした研究,新規な研究,いずれにおいても高く評価できる成果をあげている。 ・マイクロバイオームや生物発光イメージングなど基礎研究から取り組み、精度管理、トレーサビリティ、標準化に繋がる成果が複数出ていることは本領域の誇れる成果である。今後、こうした生体情報評価手法は、医療のみならず各分野で更に求められるようになる。世界標準を目指してもらいたい。 ・共生細菌、昆虫を用いた物質生産技術の開発は、産総研の本領域を代表する世界レベルの基礎研究である。農業領域における革新的な応用展開に今後も期待する。 (改善すべき点及び助言) ・生命工学領域の基盤技術力の大きなインキュベータの中で優れた目的基礎研究が生れておりその技術レベルは極めて高いものではあるが、一方で「橋渡し」研究などから生まれる新たな「目的基礎研究」への展開は少ない。研究開発ステージを意図的に循環させるための施策はまだ不十分と思われる。 ・基礎研究では、一般的に研究領域の幅広さが求められる傾向にある。従来の人的リソースに依存した形に加え、ビッグデータや世界の傾向など「第三者としての基礎研究」課題を取り入れ、その上で産総研として意図的に注力するところと、競争優位性の観点から始めるところを作るなど、研究領域を決めていくプロセスにもイノベーションが必要とされている気がした。 ・目的基礎研究は多岐にわたり実施されているものと思われるが、その全容が明確にされていない。 ・基礎研究としての腰を据えた研究の進め方も重要であるが、早目に共同研究に移行するとか、研究実施体制をどうするかを見極めるような研究課題の棚卸作業も必要であると考える。但し、研究者のモチベ- 85 -

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