平成30年度研究評価委員会(エレクトロニクス・製造領域)評価報告書
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膜などの開発に成功した。第4期は、IoTデバイス開発への貢献を目指し、AlNおよびGaNを主なベース材料とした窒化物薄膜の圧電性などの特性向上に関する研究開発を行った。 平成27-29年度は、レアアースを使わずに安価なマグネシウムとニオブをAlNに同時添加することによりScAlNと同等の圧電性能を実現した。また、ハフニウムやモリブデンの金属配向層の利用で単結晶と同等の圧電性を示す高品質なGaN配向薄膜をスパッタ法で作製する技術を開発するなど、産業界に貢献する成果を挙げた。とくに、企業との共同研究等を通して開発したScAlN圧電薄膜については、平成29年度には特許実施契約締結による知財収入に結び付くとともに、最新型スマートフォンの高周波フィルタに搭載されている。平成30年度は、新しいセンサ材料開発を目指して第一原理計算などを用いて材料探索を行い、マグネシウムと複数の遷移金属元素の組み合わせによって、ScAlNを超える圧電性能を示す新規の窒化物を予測した。平成31年度は、この計算結果を実証実験により検証する。 ●スマート製造ツールキットの開発 製造業の生産現場にITやIoTを導入して、各種情報の収集、処理、分析、通知までの自動化(スマート製造化)を促進することは、生産性向上と競争力向上に必要である。産総研オリジナルの製造業IT化ツール「MZ Platform」を拡張し、製造業事業者が独自にIT化のみならず、IoT化の実施を可能とするスマート製造ツールキットを開発した。スマート製造化の促進には、ITやIoTの専門家に依頼して市販のツールやプラットフォームを導入する選択肢があるが、スマート製造ツールキットを用いることでITやIoTの非専門家である製造業事業者が独自に取り組める点が優れている。 平成27-29年度は、IoT化に必要な自動データ収集と可視化、分析、通知に関するニーズ調査と、既存の機器設備をIoT化する実験を行い、機能拡張の範囲を決定して自動データ収集と可視化、分析、通知の機能を開発した。平成30年度は、安価なセンサやマイコンを用いて既存の機器設備をIoT化するための資料等をコンテンツ集としてまとめた。コンテンツ集は、平成30年12月から一般に配布を開始し、スマート製造ツールキットを用いた企業や大学等でのシステム化事例を蓄積している。平成31年2月時点で3件の事例があり、具体例の1つとしては企業の生産現場で既存のプレス加工機から稼働実績データを自動収集して可視化と分析を実現し、それによって生産のサイクルタイムのばらつきを明らかにし、改善活動や人材育成の必要性を示したことが挙げられる。平成31年度は、「つながる工場モデルラボ」における実証展示等で広報活動を展開し、技術移転と人材育成を実施する。 【成果の意義・アウトカム】 ●変量多品種IoTデバイス生産を実現するミニマルファブの開発と普及 生産のグローバル化が進む中、多様化する顧客ニーズに応えて高付加価値の製品やサービスを創出していくことは、我が国の産業界の最重要テーマの一つである。多様化する顧客ニーズへの応は、変量多品種システムの必要性を意味する。ミニマルファブは、半導体製造においてこの変量多品種生産を実現する。半導体でこれまで重要だった資金力だけが競争の源泉であるメガ競争ではなく、誰もが参入できるハイテク産業のスモールビジネスを実現するシステムである。ミニマルファブが実現すると、(1)設計などの準備を含め、これまで2-6ヶ月かかっていたデバイスの製造を、1週間以内で実行できるようになり、(2)宇宙開発機器で使用するデバイスなどにおいて、例えばデバイス1個だけをテーラーメードする場合、従来技術では1-10億円の費用を必要とするところ、100万円程度で製造できるようになる。これにより、新事業創出のアイデアと意思があれば、大きな資金を集めずともハイテクビジネスを起こすことができるようになり、多くの人々がその恩恵を享受できる産業システムが構築される。ミニマルファブは、これまでに51機種が商品発売され実用化段階に入っている。また、これらの実用化開発の成果を認められ、これに貢献した中心研究者が電気科学奨励賞(旧オーム賞)を受賞した。 ●製造プロセスの高度化と複合化技術の開発 開発した砂型積層造形技術は、機械部品に要求される、高剛性かつ軽量化、複雑形状化、表面微- 26 -

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