平成30年度研究評価委員会(エレクトロニクス・製造領域)評価報告書
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出現象を見出し、MOS型の従来電子放出源に比して、一万倍の性能(電子放出効率と放出電流密度)を実現した。平成31年度は、低温CVD単層グラフェン薄膜をエレクトロニクス素材上へ直接成長する。GOS型電子放出源については、超高効率電子放出のメカニズムを解明する。 【成果の意義・アウトカム】 ●量子コンピュータ・量子アニーリングマシンの基盤技術開発 大規模な超伝導量子アニーリングマシンのための製造基盤技術を第4期に確立した。今後、大規模超伝導量子アニーリングマシンの実現によって、従来の非ノイマン型コンピュータでは処理不可能であった大規模データに対する組合せ最適化問題が低消費電力・高効率で処理できるようになるため、製造・エネルギー・創薬・医療・自動運転・農林水産業・運輸・教育などありとあらゆる産業に対して破壊的イノベーションがもたらされる。例えば、大都市における渋滞解消や大規模工場におけるオペレーションのリアルタイム自動最適化が可能となる。また、高い動作温度を有するSi-TFET型量子ビットにおける1ビット操作(2量子ドットで1ビットを構成)の成功は、小型高集積可能なシリコン量子コンピュータ開発に向けての第一歩と位置付けられ、量子計算技術の社会実装につながる成果である。 ●スピントルク発振素子を用いたニューロモルフィック回路の基盤技術開発 STOのニューロモルフィックコンピューティングへの応用は、従来技術に比べて数桁小さい直径30 nmの演算器を実現できる可能性を有していることから、高集積化が可能となる。 ●相変化/トポロジカル材料による不揮発メモリ、新奇デバイスの開発 超格子膜を採用した新たな相変化メモリの実現によって、データセンターのさらに低消費電力化が可能になることから、データセンターの小型化、分散化が加速される。超格子膜の量産プロセスの確立によって超格子型相変化メモリが実用化されれば、データセンターのメモリを一気にiPCMで席巻することが期待できる。また超格子で発現するトポロジカル絶縁体という新しい量子物理現象を応用したスピン蓄積装置などの新機能デバイスにつながる可能性がある。 ●電圧書き込み型MRAMの基盤技術開発 新規開発したMTJ素子は直径30 nmまで微細化しても長期間記憶を保持できる基本性能を有しており、半導体チップ内の大容量キャッシュメモリ(LLC: Last Level Cash)の置き換えに適している。LLCを不揮発性メモリで置き換えることができればIoT用マイコンチップの待機電力の大幅な削減が可能となり、IoT機器の省電力化とバッテリー寿命の向上につながると期待される。 一連の研究成果により、文部科学大臣表彰、市村学術賞、丸文学術賞、船井学術賞、つくば奨励賞、応用物理学会優秀論文賞などを受賞した。 ●新超伝導材料の開発 超伝導の社会実装を考える場合、高い超伝導転移温度とともに臨界電流などの超伝導特性の異方性が小さく、加工が容易な特性をもつ超伝導材料を開発することは低コストでの製造の上で極めて重要である。本研究で開発した新超伝導材料AeAFe4As4は、銅酸化物超伝導体に比べ超伝導特性の異方性が小さく、合成の容易な多結晶試料でも良好な特性が得られるという利点があり、大量のヘリウムを使用しない冷凍機で冷却可能な中温度域(20-30 K)で使用可能な超伝導磁石、超伝導接合素子の開発につながると期待できる。これらの成果により、これまで超伝導科学技術賞、日本応用物理学会講演奨励賞、Highly Cited Resesrcher等を受賞した ●フレキシブル強誘電体材料の開発 新規に見出した有機強誘電体材料は、従来型PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に匹敵する分極や圧電特性を有し、フレキシブルな不揮発性メモリやセンサ、アクチュエーターなど各種強誘電、圧電デバイスに適用可能である。これは、生体情報を装着感なく計測できる超低消費電力・貼付型情報入出力端末デバイスやエナジーハーべスティングの要素技術として、IoT社会の実現に貢- 17 -

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