平成30年度研究評価委員会(エレクトロニクス・製造領域)評価報告書
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モーターなど多方面で既に実用化されており、最近では超伝導接合素子を用いた量子コンピュータの開発も進められている。これら超伝導技術は、将来の省エネルギー社会の実現に向けて大きく貢献すると期待される。そのためには、高い超伝導特性(臨界温度、臨界磁場、臨界電流密度)や低コストでの生産が可能な特性を有する超伝導材料の開発が必須である。 第4期は、上記の超伝導特性の更なる向上を目指して、これまでに高い超伝導特性を持つと報告されている銅酸化物および鉄系化合物を対象に、新たな結晶構造を持つ物質の開発や化学組成の最適化を行うことで、超伝導特性の向上を目指した。その結果、平成28年に新たな鉄系超伝導体AeAFe4As4 (Ae = Ca, Sr, A = K, Rb, Cs)の合成に成功し、更に単結晶試料を用いた超伝導特性評価によって、同物質が既知の鉄系超伝導体と比べて約10倍もの高い臨界電流密度を有することを明らかにした。同物質は、実用材料の有力候補であり、初発表となる平成28年度の論文はこれまで70回以上引用された。また、コンビナトリアルケミストリー法により高効率で新超伝導体を探索し、複数の新規の超伝導体を発見することに成功した。平成30年度は、構成元素としてアルカリ土類金属を含まない一連の鉄系超伝導体(Ln,A)Fe2As2 (Ln = Ce, Pr A = Na, K, Rb, Cs)や、陰イオン(P)が金属イオン(Rh)で囲まれた、ユニークなアンチペロブスカイト構造を有する新超伝導体Mg2Rh3Pなどを新たに発見した。第4期中の成果は、これまで53報の論文として発表した。平成31年度は、これまでに確立した手法と得られた知見に加え、複合アニオン化などの新しい手法を導入し、実用レベルの特性を目指し、さらなる高い温度での超伝導材料の開発を推進する。 ●フレキシブル強誘電体材料の開発 これまで強誘電体材料の大半が環境・資源的負荷(鉛やレアメタル)に課題のあるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等のセラミクス材料に頼ってきた。これに対して有機強誘電材料は、有毒な鉛や希少金属を含まず低環境負荷であるとともに、デバイスのフレキシブル化が期待される。 平成27-29年度は、フレキシブル材料として世界最高の自発分極(外場なしで発生する分極)30 µC/cm2を示す有機強誘電材料クロコン酸を見出し、その性能を実験および理論計算により実証した。一方、フレキシブル有機強誘電材料を塗布法により薄膜化する技術を開発し、低電圧で駆動させることが可能な強誘電デバイスの作製法を開発した。また、高い静電エネルギーを低い損失で貯蔵できる材料として、鉛フリーの有機反強誘電体スクアリン酸などを見出した。平成30年度は、反強誘電相転移現象を微視的に解明することで圧電性能を向上させる要因を見出した。これにより、イミダゾール系有機反強誘電材料において、高い圧電効果を示すことで知られるフレキシブル強誘電材料であるPolyvinylidenedifluoride(PVDF)の性能(圧電定数:d33 = 30 pm/V)を大きく上回る電気歪み性能(d33 換算で280 pm/V 相当)を実現した。以上の成果は、Nature Communications、Advanced Materialsなどの高IF(> 10)の論文誌で発表した。平成31年度は、キャパシタデバイスのエネルギー損失をもたらす分極履歴曲線のヒステリシスの抑制要因を解明し、フレキシブル素子用材料として実用化をもたらすための材料設計基盤を確立する見込みである。 ●高品質グラフェンの低温成長技術とデバイス機能の開発 グラフェンは、一原子厚さの炭素原子シートから成る二次元材料であり、電気特性や光学特性などに優れたカーボンナノ材料である。これらを応用した電子デバイスを開発するためには、高品質グラフェンを低温で作製する技術が不可欠である。 平成27-29年度は、独自のプラズマCVDプロセス (Chemical Vapor Deposition)により、単層グラフェンの低温成長に取り組んだ。低温成長では、グラフェンにおける欠陥生成や炭素原子シートの多層化がネックとなる。この解決のため、従来の100倍高い圧力下での成長技術を開発した。また、グラフェンの伝導性と透明性を活かしたデバイス機能の開拓も並行して推進し、従来の金属/SiO2/Si (MOS)型素子に対して、グラフェン(G)/SiO2/Si(GOS)型素子を開発した。平成30年度は、低温プラズマCVDについては、励起されたラジカルの強制対流により、マイクロメートルオーダーのグレインサイズを有する高品質単層グラフェン膜を、銅箔上に作製することに成功した。GOS型素子については、電圧印加により、従来では考えられなかった超高効率での電子放- 16 -

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