平成27年度研究評価委員会(材料・化学領域)評価報告書
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-9- なものづくり技術を牽引する無機機能材料の開発、⑤省エネルギー社会構築に貢献する先進構造材料と部材の開発において、TRL「1.基本現象の発見、原型装置の開発」から「2.原理・現象の拡張」、「3.技術コンセプトの確認」までの段階に位置付けられる。今年度主要な目的基礎研究成果として、①、③、④、⑤について示す。 まず、研究項目①において、光異性化反応を利用した光液化固化相転移材料を設計し、これを利用した接着材料の研究を進めている。今年度は、接着と剥離が繰り返し可能なスマート接着剤の開発を進め、接着強度の強化等に成果が上がった。また、官能基変換技術として木質バイオマスから、触媒量の酸(従来の1/20)で化学品合成原料(レブリン酸)に変える(収率70%以上)安価な触媒系の発見、バイオマス由来レブリン酸からプラスチック基幹材料の大量合成法を確立した。バイオマス変換触媒開発・合成プロセスの一連の設計に向けて、理化学研究所との提携も進めた他、研究項目①での研究課題においては、北海道大学、筑波大学とのクロスアポイント計5件が成立、大学との連携強化が進んだ。この他、研究項目①に位置付けられる成果による論文は今年度既に40報が発表されている。 次に研究項目③の成果として、高度計測技術開発で大きな成果を上げた。電子顕微鏡による、軽金属Li元素の単原子計測、原子欠陥イメージング等に成功、原子レベルでの化学結合や構造の見える化は、ナノ材料の設計や機能解析の革新的技術シーズになる。本成果は、学術的価値も高く、Science, Nature Materials, Nature Communicationsといった高IF雑誌に掲載された。他の研究成果と合わせ、研究項目③については、54件の成果が論文として発表された。 研究項目④では、チタン酸バリウムのナノクリスタル化(ナノキューブ)と配列集積膜化技術開発、特異な高誘電特性の実現が顕著な目的基礎研究成果となる。ナノキューブ集積体マイクロパターン形成、プロセス最適化による固溶体ナノキューブ合成にも成功することで、キューブの組成制御も可能となった。開発した強誘電性ナノキューブは、多結晶にもかかわらず単結晶の誘電率を大きく超え(2倍程度)、メモリデバイス開発等の革新的デバイス技術シーズにつながると同時に、一気に量産技術へ展開するフェーズも含んでおり、TRL上大きなスペクトルを持った成果である。本成果を合わせ、今年度21件の論文が発表済みである。 研究項目⑤では、軽量構造部材の開発において、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)では、セラミック粒子でマトリックスの熱特性を改善した材料の開発とマイクロ波を用いた成型加工の検証、難燃性マグネシウム合金では高度強化と高延性 (350MPaの強度と14%程度の伸び)を実現し、輸送機器のさらなる軽量化のために期待されながら市場未成である材料について、今年度、着実な成果を上げた。この他、研究項目⑤に対応付けられる研究成果の論文発表数は今年度15件となる。 領域では、各研究項目の戦略課題における目的基礎研究を強化すべく、萌芽的研究プロジェクトを設定、今年度21件の研究提案を採択した。上記、研究項目③の高度計測技術開発におけるLi原子の可視化は、萌芽的研究プロジェクトによる成果が大きく貢献している。 以上を総括すると、電子顕微鏡による軽元素( H, Li)の単原子計測成功は世界でも類例のない成果であり、カーボンデバイス、電池などのプロセスの「その場観察」にも道を拓く革新的技術シー

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