平成27年度研究評価委員会(生命工学領域)評価報告書
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-41- の研究開発課題が、産総研発ベンチャー企業6社の設立、企業への橋渡し共同研究、ライセンスによる企業からの製品上市などの優れた成果を挙げており、高く評価できる。 ・近年の日本企業の経済状況の悪化に伴い、多くの大学・研究機関の企業からの資金獲得額が大きく減少している中で、目標値には若干届かないものの、昨年並みの民間企業からの資金獲得額を達成していることは評価に値する。さらに、昨年までと比較して、企業からの資金提供を伴う共同研究契約件数が全体で70%、とりわけ中小企業との契約件数が140%増加したことは特筆に値する。 ・標準化に向けた技術の検証方法やプロトコールの作成など、本技術から生み出されるものは大きい。 ・ロボットとITによる創薬支援技術でベンチャー創出にまで至った点は高く評価し、海外進出も含めた今後が大いに期待される。また、グローバルヘルスを見据えたマラリアの診断チップも大いに評価する。ロボットが先進国に向けた展開であるのに対して、途上国に向けた展開もある点は素晴らしい。 (問題点・改善すべき点、助言) ・民間からの資金獲得額が目標値を達成していない。これはこれで問題あるが、政府から押し付けられる数値が目標値だと、産総研におけるそれぞれの研究力から想定されるものとの乖離があればあるほど、研究者の研究意欲を低下させることになる。もっと、実力に見合った目標値設定が重要で、評価後の展開に関して計画案策定に大きく反映させるべき。また、民間資金の獲得のために、橋渡し研究後期への研究資源や予算の投入により、基礎研究課題への予算配分にしわ寄せがいき、基礎研究に携わる研究者のモチベーションの低下が生じることを危惧する。 ・ベンチャーが成長するためには、技術に加えて、練られた事業・資金計画の策定と優れた経営者の参画が必要である。そのために、多様な経験を積んだ外部人材を確保・招聘するとともに、企業との提携機会を増やす施策の推進やベンチャーキャピタル・監査法人等の専門家集団との連携を図ることが必要。 ・産総研の魅力は基礎・応用研究の奥深さに加えて、研究領域の幅広さである。ロボットとITのプロジェクトに代表されるような異分野技術の融合から大きなイノベーションを目指した研究をもっと推進してほしい。特に産業界との情報共有、コミュニケーションの機会をもっと増やし、産総研と産業界の相互補完的連携を新たなイノベーションにつなげてほしい。日本のR&Dを牽引する司令塔的な役割として、産学官連携や国家プロジェクトの中核を担い、民間企業単独実施では難易度が高いが日本にとって重要な日本発の技術の国際展開や世界市場における国際標準化を戦略的に進める取組み等、ビジネスモデルの革新に連動するような活動を期待する。 ・他の研究機関では聞くことができない成果が多数得られているため、省庁からの民間資金獲得額の目標値は達成されていないが、A評価とした。5年間で民間からの資金獲得を3倍に増やす、というのは明らかに達成困難な目標値である。現在の環境下で5.7億円の民間資金獲得は、産総研であればこその実績であると評価できる。今後は企業のR&Dではなく事業体に関わる開発組織と共同研究を推進することにより、実用化への道がよりひらかれる可能性がある。評価指標としては、民間からの資金獲得額のみならず、知財のライセンスに関する引き合いやライセンス実績、知財に基づくベンチャー起業、ノウハウの蓄積などの多様な実績も考慮することが望まれる。 ・産総研発ベンチャーは良いことだと思うが、それは初期の段階で、本来、産総研が支援する対象であるのかどうか疑問がある。研究や技術のデュアルユースに関して、産総研としてどうするべきなのかをしっかりと議論し、単に考え方(哲学)ではなく、具体的な対応策などを明確にしてほしいと思う。また、ベンチャー創出や海外進出に至った成功事例から貴重なノウハウを蓄積して、後続のプロジェクトに活用してほしい。 3.「橋渡し」のための関連業務 (1)技術的ポテンシャルを活かした指導助言等の実施 (評価できる点) ・近年、企業にとって医療機器開発に関わる審査プロセスはハードルが高く、ひいては実用化の遅れと国際的競争性の低下が懸念されている。そうした中、PMDAに10名もの出向者を設定し、専門性を育成していることは業界の趨勢を先取りする優れた取り組みである。 ・技術ポテンシャルを生かした技術コンサルテーション、医療機器開発ガイドラインと評価指標の策定、医療機器レギュラトリーサイエンス研究会の設置、外部資金申請書作成支援などの企業向けの指導、支援活動は、産業活動に対する産総研の社会貢献という観点から評価できる。 (問題点・改善すべき点、助言) ・産業活動支援への過度なコミットメントは、研究者の貴重な研究開発のための時間を奪う可能性があるため、戦略的な視点で優先順位をつけて支援活動の選別を行うことが望まれる。その選別結果に基づいて評価指標を明確化する必要がある。

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