平成27年度研究評価委員会(生命工学領域)評価報告書
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-40- (2)「橋渡し」研究前期における研究開発 (評価できる点) ・テーマのステージアップに従い、運営費交付金の中の戦略予算を重点的に配分したり、テーマのナショナルプロジェクト化への後押しをしたりする施策は良い。研究管理を行うユニット長が企業出身のイノベーションコーディネータと連携・補完して、両輪となって研究者を指導し、テーマを推進・加速していく取組みは良い。 ・目標値に近い知財創出が達成されていると思う。戦略予算テーマによる高感度イメージング技術・新誘電率顕微鏡の開発は、産総研ならではのものであり、その取組みは評価できる ・世界最大級の天然物ライブラリはNEDO創薬プロジェクトの資産を発展させたものであり、糖鎖を利用したB型肝炎のマーカーも産総研の長年の糖鎖研究の実績を踏まえたものであることは評価できる。 ・世界一を誇る天然物ライブラリを用いた創薬開発支援、世界的トレンドである感染症対策につながる簡易検査、日本が伝統的に強く夢ある研究テーマである生物発光、完全な暗号化で運用できる秘匿検索技術、高度に実用性を高めた植物の創出など、産総研の強みを生かした多様性ある研究前期の研究が推進されていると評価できる。 (問題点・改善すべき点、助言) ・知的財産の質的状況が評価目標に掲げられているが、これを定量的に評価することはかなり難しい。知的財産のライセンスの引き合い件数や反証引用件数で評価することも考えられるが、革新的な技術シーズや実用化のための要素技術に関する知的財産の場合には、その周辺技術が未成熟であるため直ぐに実用化に結びつかない、いわゆる死の谷の存在によって、知的財産の質的状況が低く評価されてしまうケースもあると考えられる。そのような知的財産の質を正当に評価できる評価指標も考えていく必要があると思われる。 ・このステージでの評価基準が知財(特許出願)と公的資金獲得額になっているが、「橋渡し」前期における研究の重要性が明確にされていない。出願特許の質的・量的判断ができると解析精度がもっと上がると思う。目的基礎研究ではないので、このステージの研究の中には競合する技術が存在するものもあると考える。その場合、当該研究の位置付けが他と比較してどうであるのかを示すことができれば、今後の投資の可否を判断する材料の一つになると思う。 ・知財戦略を強化していくために、外部からの専門家の補充も含めて、人材の確保・育成が課題である。研究者個人・ユニット長の頑張りだけでは限界があるので、テーマのステージアップ基準の明確化やそれに伴う要員・予算等のインセンティブのさらなる充実等、テーマをより組織的に応援していく仕組みの充実が求められる。 ・「橋渡し」前期における研究開発であるだけに、様々な研究の展開可能性があると思う。その可能性をしっかりととらえて、展開研究を推進する仕組みがあっても良いと考える。それは、産総研内にとどまらず、中小企業やベンチャーとの委託・共同研究などを活用するなどもっと横展開を考えた取組みを多くした方が良いと思う。 ・新規性が高く競争性もあり、社会的にもインパクトの高い複数の研究テーマについて、一次成果が出ている。一般の目にとまることが極めて少ない冊子による発信のみでは、知る人ぞ知る、という認知しか得られず、もったいないと感じた。産業界が協業に着手するかどうか、民間資金が投入されるかどうか、においては、社会的に価値が認知されているという点も、大きな加点要素である。一般メディアへの広報、CSRにも力を入れてほしい。 ・橋渡し研究前期から後期へとスムーズにステージアップするためには、技術シーズの知財化のための橋渡し前期研究のみならず、死の谷の要因と考えられボトルネックとなっている未成熟な要素技術群を明確にし、橋渡し研究前期段階から開発資源をその要素技術群の開発と知財創出に戦略的に投入する必要がある。このような実用化に向けてボトルネックとなる要素技術を開発研究課題として抽出する過程では、産業界のニーズと実用化技術シーズ、産総研内の技術シーズの双方に明るいイノベーションコーディネータが果たす役割は大きい。このような企業知と産総研知とのマッチングにたけた有能なイノベーションコーディネータ人材の育成とインセンティブの与え方について研究組織として考えていく必要がある。 (3)「橋渡し」研究後期における研究開発 (評価できる点) ・ロボット創薬支援技術、肝線維化・胆管がん・肝硬変などの糖鎖診断薬、ステルスRNAベクターを利用したiPS細胞作製技術、マラリア超早期診断デバイス、iPS細胞を特異的に認識する薬剤融合型レクチンを用いた移植細胞からのiPS細胞の除去技術、完全制御型植物工場での植物による医薬品生産技術など数多く

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