平成27年度研究評価委員会(生命工学領域)評価報告書
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-39- ・動物用医薬品となるタンパク質を発現させた植物体そのものを医薬品として用いるというアプローチはユニークであり、新奇な動物用医薬品市場の開拓につながるものの、低濃度の経口投与によって治療効果が期待されるタンパク質が対象であり、適用範囲はある程度限定される。 2.「橋渡し」のための研究開発 (1)「橋渡し」につながる基礎研究 (目的基礎研究) (評価できる点) ・応用展開を見据えた高度な創薬・診断、高品質な物質生産などの、多様性に富む高レベルの目的基礎研究が数多く推進されており、Science、Nature姉妹誌、PNASなどのHigh Impact Factor誌にその成果が発表されていることは評価できる。特に、PNASに発表された共生細菌のための昆虫細胞の形成機構の解明、昆虫の体内への共生細菌取り込み機構の解明に関する論文は、新奇な害虫駆除農薬や害虫防除方法の開発につながることが期待され、論文の被引用件数も3年間で100件を越え、極めて注目度の高い研究成果であり、高く評価できる。 ・生命工学領域全体として過去3年間に発表された1165件の論文の平成27年度における被引用件数は7112件であり、直近の3年間の発表論文が1件当たり平均で約6回引用されているという実績は評価に値する。 ・大学や外国も含めた他の研究機関と包括研究協定や覚え書きを締結して、幅広い連携体制を構築していることは評価できる。 ・若手研究者に1テーマ/人を認めて、多様性の有るテーマの着手推進を認めている。外部資金を有効活用して、バラエティに富んだテーマを走らせて自由度を持たせている施策は有効である。 ・研究者の評価に関して、それぞれの開発ステージでの評価指標に柔軟性があり、一律でない点は良い。 (問題点・改善すべき点、助言) ・論文数がモニタリング指標として示されているが、あまり過度な目標値を与えると、研究成果を短期的に挙げるためにインパクトが低い小粒な基礎研究が多くなってしまい、革新的技術シーズの創出が困難になる傾向があるため、好ましくない。 ・どの研究組織についても言えることであるが、平均値としてはそれなりの数になっていても、構成員のプロダクティビティには相当な不均一性が生じがちである。研究という活動の本質から、目に見える形でのプロダクティビティには上下があるのは当たり前のことであるが、あまりにアクティビティの低い研究者層については何らかの手立てを考える必要がある。 ・持続的な多くの萌芽研究の採択。このためには、現在流れている研究開発テーマの休止・停止を勇気を持って実行することが必要。 ・社会のニーズは顕在化しているものだけではないので、研究者からのボトムアップや企業からの依頼だけではない「社会の潜在的ニーズ」に基づくようなテーマ設定も重要である。そのためにはシーズとニーズの両視点を入れた産総研でしかできないような研究企画機能の充実を期待する。 ・基礎研究はあまり論文数の目標値に縛られることなく、科学界、社会に対して与えるインパクトの高さという指標で評価する必要がある。 ・ともすると研究の出口議論ばかりが注目されることも多いが、将来の優れたテーマにつながるようなパイプラインの確保・充実が重要であり、「基礎研究」の充実は産総研の最優先課題として進めてほしい。知財戦略や対外連携の助言等のために、研究者のサポート機能としてのパテントオフィサーやイノベーションコーディネータ等の充実は重要。本ステージのテーマ設定・改廃については主にユニットごとの運営に負っている。自由裁量は良い面も多いが、一方、研究領域の継続性を保っていくには、ユニット運営が属人化しないように、研究者からのテーマ提案の吸い上げや基礎テーマのマネジメント等について、もう少し組織的な運営を行う配慮も必要である。 ・目的基礎研究であるため、失敗確率も高いと思うが、その実態が見えていない。また、当初の狙い通りに行ったものなのか、そうでないのかを明確にすることで、計画の妥当性が確認でき、次の研究戦略の立て方やその実施方法の参考になると思う。出口研究やその社会実装に向けた取り組みが求められているが、基礎研究の必要性と重要性をしっかりと主張し、新たな発見からイノベーションにつながる研究としての王道を維持してほしい。また、そうした新たな視点で研究に取り組むチャレンジングな研究者の育成と支援体制が重要であると思う。 ・基盤的知的財産は、このステージで産まれることが多い。しかし、研究者には研究の推進にこそ注力できる環境があるべきである。特に、共同研究の幅が広がると知財マネジメントは大変に難しく、一研究者にとって負担となる。また、国際出願すべき請求範囲の設定評価、出願後のフォローは優秀なパテントオフィサーの存在に依存している。研究者のみならず、知財部門も橋渡しのみならず基盤研究視点の人材育成が重要。

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