平成27年度研究評価委員会(生命工学領域)評価報告書
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-37- 評価委員コメント及び評点 研究評価委員会(生命工学領域) 1.領域の概要 (1)領域全体の概要・戦略 (評価できる点) ・目的基礎研究、橋渡し研究前期、橋渡し研究後期を一連の研究として実施するために、必要に応じて同領域内のみならず、他分野領域からも適切な人材を再配置した異分野融合研究グループの構成が可能な高い自由度を確保した組織編成システムは優れており、実際にこのシステムが機能して、数々の優れた成果を挙げていることは高く評価できる。 ・目的基礎研究、橋渡し研究前期・後期の各段階で、各研究者が自身の研究の位置付けを意識するように、位置付けに合わせた評価指標を提示し、研究成果の見える化を図っていることは評価できる。 ・パテントオフィサー、イノベーションコーディネータなどの研究開発支援スタッフを配置し、研究者との連携のもと、知財創出、産業界からの資金導入、民間企業との共同研究、研究シーズと開発ニーズのマッチングなど、産業界とのパイプの強化を図り、領域全体収入に占める外部資金の割合が50%という高い比率を達成していることは評価できる。 ・健康長寿社会およびエネルギーや環境負荷を抑えた持続可能な社会の実現に貢献することを明確な目的として掲げ、「創薬」、「医療・ケア」、「生物生産」の3つの分野に絞り、しかも、全国5か所のセンターに研究課題を集約・重点化して、研究を遂行している点は、研究の効率を高める上で良い。 (問題点・改善すべき点、助言) ・産官学全体が、橋渡し研究、出口重視、成果の見える化、トランスレーショナルリサーチ、という傾向が続いている。では誰が基盤的研究、直近の成果を求めない地道に時間を要する研究テーマを行うのか。出口、出口と言うが、入口こそ大事である。イノベーションを率いる立場の産総研は、独自性ある研究への取り組みを重視してほしい。 ・テーマの予算配分にメリハリをつけることは良いが、テーマの重要度や優先順位の評価方法も含めて、予算配分の妥当性を考慮した仕組みの構築が必要であると思う。 ・戦略予算として6.5億円を所内の研究チームに配分しているが、その配分の方法など重点化を目指した効果的な資金投資となっているのかどうかわからない。スタートアップ資金としてならば良いが、自立化を促すためにもこの資金の予算建てには再考の必要があるように思う。 ・研究者個人の評価指標としては、多様な評価指標のもとに評価するシステムを構築することが好ましい。例えば、目的基礎研究の評価指標としては、論文数、被引用数のみならず、掲載雑誌のIF、掲載雑誌の表紙採用、ハイライト紹介など、個々の論文の注目度の要素も評価指標に含めることが望まれる。 ・橋渡し研究前期の評価指標としては、知財創出の量的状況のみならず、その質的状況を考慮するために、周辺特許、類似特許の有無、実用化のためのキーテクノロジーとしての重要度などを知財の専門家と協力して自己評価する仕組みを作ることが望まれる。また、創出した知財の活用を前提とした、公的研究開発プロジェクトへの参画やプロジェクト立ち上げなどの多様な実績も評価指標に含めることが望まれる。橋渡し研究後期の評価指標としては、民間からの資金獲得額のみならず、知財のライセンスに関する引き合いやライセンス実績、知財に基づくベンチャー起業、ノウハウの蓄積などの多様な実績も考慮することが望まれる。 ・つくばと地方センターに分散した組織構成は、リソース・設備・人材の集中による効率化のみならず相互作用という点でも問題をはらみがちであるように思われる。ドラスティックな変化・再編は無理だとしても、その弊害を減らす方策を常に意識する必要がある。 ・ある特定の領域に閉じた基礎研究→応用研究→開発研究→実用化というボトムアップ的な従来型研究開発のリニアモデルでは革新的な技術、製品を生み出すことは困難になりつつある。このような状況を打破するためには、イノベーションコーディネータによる社会ニーズ、産業ニーズと技術シーズのマッチングのみならず、研究者自身が社会ニーズや産業ニーズを把握することをプロモートするインセンティブや機会を与える仕組みを整備する必要がある。リニアモデルで研究開発を進めていく場合においても、必要に応じて生命工学領域を超えた他分野の研究者と分野融合することによって、革新的な基礎研究テーマの設定、研究開発過程のボトルネックの突破が可能になることが期待される。 ・生命工学領域は女性研究者の多い分野であり、大学や理研では組織を率いる立場の女性研究者の姿も増えているが、産総研での女性のリーダーシップはやや低調なのではないか。「産業化」がハードルになっている可能性もある。海外からの女性研究者招聘でモデルケースを作ること、運営側にも女性管理職を入れて施策立案に関わることが有効である。

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