平成27年度研究評価委員会(生命工学領域)評価報告書
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-6- ①創薬基盤技術の開発 これまでの古典的創薬プロセスから脱却し、創薬開発を加速させるために、新薬探索や医薬リード化合物の最適化を効率よく進めて、創薬開発を加速できる技術の開発を目指す。そのために、ロボットやナノテクノロジー、数理解析技術を駆使した創薬最適化技術、ゲノムデータから疾病因子を推定したりゲノム情報の秘匿検索を行ったりするゲノム情報解析技術、糖鎖などのバイオマーカーによる疾病の定量評価技術など、新しい創薬の基盤となる技術を開発する。 ②医療基盤・ヘルスケア技術の開発 豊かで健康なライフスタイル実現のために、医療基盤・ヘルスケア技術の開発を行う。再生医療等の基盤となる細胞操作技術と幹細胞の標準化を行うとともに、医療機器開発ガイドライン策定と標準化により実用化支援を実施する。また、健康状態を簡便に評価する技術や感染症等の検知デバイスの開発を目指して、健康にかかわる分子マーカーや細胞の計測技術、生理状態の計測技術、そのデバイス化技術の研究開発を行う。 ③生物機能活用による医薬原材料等の物質生産技術の開発 化石燃料代替物質、化成品原料、医薬品原料、有用タンパク質、生物資材など、物質循環型社会の実現のために、遺伝子組み換え技術を用いて微生物や植物の物質生産機能を高度化し、バイオプロセスを用いた医薬原材料等の有用物質を効率的に生産する技術の開発を行う。 2.「橋渡し」のための研究開発 (1)「橋渡し」につながる基礎研究(目的基礎研究) ●テーマ設定 目的基礎研究では、2030年以降の豊かで質の高い社会実現のため、高度な創薬・診断、および高品質な物質生産を可能とする研究テーマを設定している。 課題②では、幹細胞の培養・分化制御技術に確立による革新的な創薬・再生医療実現に向けて、試験管内組織分化技術の開発を推進している。課題③では、バイオプロセス活用による先進的な食料生産・植物育種に資する新たな害虫駆除システムの構築に向けて、昆虫と微生物の共生メカニズムの研究を推進中である。 ●具体的な研究開発成果 【再生医療支援技術(細胞操作・誘導技術):幹細胞から胃を丸ごと作製】 さまざまな細胞に分化する多能性幹細胞であるマウスES細胞から、試験管内で胃の組織を丸ごと分化させる培養技術を開発した。試験管内で作製したこの胃組織により、胃の治療薬研究や病態研究への貢献が期待される。 【生体分子の構造・機能解析:記憶障害・学習障害に関わるタンパク質の発見と認知症の早期発見・治療のための創薬研究】 記憶障害・学習障害に関係するタンパク質を発見し、神経伝達を抑圧する活性を有していることを解明した。さらに企業と共同で、このタンパク質と関連する分子群が認知症の早期発見・治療のバイオマーカーとなりうることを見出した。 【バイオプロセスによる生産技術開発:昆虫の共生のための細胞がどのようにできるか、害虫カメムシが共生細菌を体内に取り込む特異な仕組み、を解明】 害虫を含む多くの昆虫類は細胞内共生細菌を保有し、必須栄養素の供給など生存に必要な機能を獲得しているが、共生細菌は共生のために特殊化した細胞である「菌細胞」に局在して保持されており、母親の体内で次世代の卵や初期胚に伝達される。この菌細胞の由来や形成機構は不明であったが、本研究において、菌細胞形成の鍵となる遺伝子(Ubx)の同定に成功した。 また、農作物の難防除害虫であるカメムシ類が、消化管に発達した「狭窄部」により、餌とともに取り込まれた共生細菌を選別し、消化管に発達する共生器官に取り込むことをはじめて明らかに

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