平成27年度研究評価委員会(情報・人間工学領域)評価報告書
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-7- 2.「橋渡し」のための研究開発 (1)「橋渡し」につながる基礎研究(目的基礎研究) 【テーマ設定の適切性】 目的基礎研究においては、10年後の社会課題を念頭にテーマ設定している。今後、深刻な社会課題として高齢化問題と情報化社会に対する安全という課題が挙げられる。これに対し、高齢化社会に向けた健康寿命向上、IoT社会に向けたセキュリティ問題について対応することが必要と考えている。その上で社会課題解決に資する独創的・革新的なアイディアに基づく研究テーマを設定している。代表的な2課題として、以下の課題を推進している。 ●研究課題1『テーラーメイド化を目指したニューロリハビリテーション技術の開発』 脳損傷によって身体機能が低下した患者の機能回復訓練において、脳内に代替神経回路網が適切かつ効率よく形成できるように、個人の脳状態をモニタリングしながら訓練支援、介入を行う「テーラーメイド型ニューロリハビリテーション」の研究開発を行っている。本課題は、(a)機能回復に関わる脳の変化を知るための適切な脳損傷モデル、(b)脳の変化をモニターしてフィードバックするfNIRS(機能的近赤外分光法)による評価技術、(c)望ましい脳の変化を促進する介入技術の3つの技術開発を、サルとヒトの両方を対象とする実験研究と臨床応用研究を連携させて進めるアプローチを特徴とする。 ●研究課題2『高機能クラウド暗号化技術』 機密性の高い情報を安全に利用可能なサイバーフィジカルシステムの実現を目指し、暗号化状態のままでデータ処理が可能であり、さらに、信頼できる第三者機関を設置することなく、特定の属性をもつ不特定多数の受信者のみに復号を許す、クラウド向けの新たな暗号技術の研究開発を行っている。 【具体的な研究開発成果】 ●研究課題1『テーラーメイド化を目指したニューロリハビリテーション技術の開発』 (1-1) 脳損傷モデルに関しては、サルを対象とし脳機能研究を進めた。脳卒中患者の病態に近い運動障害を示す内包梗塞サルモデルを世界に先駆けて開発した[1]。これを用い、脳内の代替神経回路網形成の状況が明らかになった[1,2]。 (1-2) fNIRS(機能的近赤外分光法)による評価技術に関しては、体動アーティファクト除去により70%のノイズ低減を実現し、脳神経活動成分のリアルタイム抽出技術を確立した[3,4]。さらに、サルとヒトとで相互評価可能な実験系を構築するために、サル脳でのfNIRS計測を開始している。 [1] Y. Murata, N. Higo et al., “Temporal plasticity involved in recovery from manual dexterity deficit after motor cortex lesion in macaque monkeys,”The Journal of Neuroscience, vol.35 (1), 2015.1 (Impact factor 6.7, 被引用数 3) [2] Y. Murata, N. Higo et al., “Increased expression of the growth-associated protein-43 gene after primary motor cortex lesion in macaque monkeys,” Neuroscience Research, vol.98, 2015.5 (Impact factor 1.9) [3] T. Yamada et al., “Removal of motion artifacts originating from optode fluctuations during functional near-infrared spectroscopy measurements,”Biomedical Optics Express, vol 6, 2015.11 (Impact factor 3.6)

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