産総研レポート 2015
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07組織統治研究開発の推進労働慣行公正な事業慣行社会との共生人 権環境報告組織統治発、システム開発へと進んでいくことはできません。 「実は2000年代前半、日本にはSiC薄膜成長を事業化している企業がなかったため、デバイス開発用に薄膜をつけたウェハをアメリカから購入していました。その状況を脱するため、単結晶膜を堆積して結晶品質を良くするというエピタキシャル成長の優れた技術を開発。LLP(有限責任事業組合)という新しいしくみを活用して、SiCエピタキシャル成長のサービスを提供するベンチャーを設立しました。その後2007年に、この技術は昭和電工株式会社に技術移転されて、現在の昭和電工のSiCエピタキシャル成長ビジネスのもとになっています。」 このエピタキシャル成長の技術は、2006年の世界最小抵抗のパワーデバイス開発で大きな貢献のあった産総研のオリジナル技術であり、その後の大きな成果につながっています。人材育成を活性化につなげる 今後も産総研は、TIAパワエレ領域をオープンイノベーションの拠点として、パワーエレクトロニクス技術の実用化を牽引し続けたいと考えています。そこでは人材育成も重要な役割の一つです。大学でパワーエレクトロニクス分野の講座が減り続ける中、TIAの活動の一環として筑波大学に企業の寄附講座と産総研の連携講座によるパワーエレクトロニクスコースを開講しました。大学ではウェハ、デバイス、回路、モジュール、機器応用などの各技術は、材料工学、電子工学、電気工学、システム工学などテリトリーが異なります。「大学では隣のテリトリーには行きづらい。そこをつなげるのが公的研究機関である産総研の役割です。人材育成は、拠点の活性化、大学の活性化につながります」オープンイノベーションの拠点 TIAパワエレ領域では拠点としての魅力を高めるため、参画企業間で共通に使える技術のレシピ(処方箋)を蓄積しています。これにより、共通基盤となる技術を、参画企業がR&D のツールとして活用することが可能となり、自社で開発するよりもスピーディに成果を得ることができます。 「オープンイノベーションは、一緒に研究することによって資源、時間、マンパワーなどを節約するというのが基本姿勢です。参画企業はTIAから成果を持ち帰った後、自社で最終製品に仕上げて市場で勝負することとなります。 パワーエレクトロニクスは擦り合わせの技術のため、一つのパーツだけ良くても最終製品が良くなるわけではありません。そのため複数の企業が得意な技術を持ち寄って最終製品を共同開発するケースもあります。そのとき共同研究体としてのTPECはお見合いの場となり、面白いマッチングが生まれる可能性を秘めています。将来は参画企業の間で、自社で使っていない知財を他社で使えるようにするなど、オープンイノベーションのもとで知財の活用を図っていければと考えています」 海外に目を向けると、TIAパワエレ拠点やTPECができた後、欧米でも似たようなパワエレ関連の開発体制構築が始まっているとの情報があります。「パワーエレクトロニクスの技術が成熟し、エネルギー制御の効果が絶大であるとの認識が浸透してきたためでしょう。エネルギー問題は世界が抱える共通かつ喫緊の課題ですから、解決に向けて世界的な動きが見られるのは当然のことかもしれません」 パワーエレクトロニクス技術を活用し、新しい高性能デバイスでどこまで電力ロスを減らし、省エネ効果を上げられるか、どのようなシステム化を図れるか、どのような新しい応用分野を開拓できるか、これから先も挑戦は続きます。

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