産総研レポート 2015
21/66

19研究開発の推進組織統治研究開発の推進労働慣行公正な事業慣行社会との共生人 権環境報告ています」 AD法と時代のニーズがマッチしたいま、この技術の世界シェアは今後も伸び続けると明渡は見ています。想定外の分野まで広がる用途開発 その後も企業から産総研へのアプローチは増え、さまざまな産業分野の企業がAD法によるコーティング技術の用途開発に乗り出しています。その背景には2つの要因があります。一つは常温衝撃固化現象のメカニズム解明が進み、量産化に向けた研究開発がしやすくなったこと。もう一つは、透明なセラミックス膜の形成が実現できたことや、ロールtoロール方式での製造が可能となるなど、AD法の技術が進歩していることです。 「コーティングはものづくりの基盤技術の一つですから、多くの分野でAD法を取り入れることができます。セラミックスを常温で加工できると、コーティング可能な材料の幅が広がり、最終製品の機能まで上げられる可能性があります。そのため幅広い分野の企業が集まり、当初は想定していなかった用途開発も盛んに行われています」 具体的には、全固体リチウムイオン電池(トヨタ自動車株式会社と共同研究)、フィルムタイプ色素増感太陽電池(積水化学工業株式会社と共同研究)、燃料電池などエネルギー分野をはじめ、パワーエレクトロニクス分野、電子部品や磁性デバイス、産業用ローラーなどの製造分野、光学分野、自動車関連分野、義歯やインプラントなどの医療分野まで、用途開発の裾野が広がっています。 「低コスト化が実現できれば、将来は塗装に近い使い方ができるのではないかと夢を描いています。跳ね石が当たっても傷つかない自動車をはじめ、身近なところでさまざまなメリットが得られるでしょう」サイエンス・エンジニアリング・ビジネスに橋を架ける AD法を用いて商品化・事業化の手前まで進んでいる例も複数あり、TOTOに続く成功を実現すべく共同研究が進められています。 「サイエンスとエンジニアリングの間には大きなギャップがあります。エンジニアリング(=企業側)は、製品を開発し、それをユーザーに適切に使用してもらうためのサポートやサービスも提供しなければなりません。新しい技術の導入はリスクと隣り合わせであり、ビジネスとして成功する、しないも含めて、そこに“死の谷”があるといえます。サイエンスとエンジニアリングが互いに歩み寄らなければ、谷に橋を架けることはできません。 TOTOの場合、産総研にとって良いパートナーでした。付き合い始めたころはこの技術の可能性に半信半疑だったと思いますが、最終的にこの技術を信頼し、10年間にわたって人材と資金を投入してくださいました。橋渡しを成功させるためには、確固とした相互の信頼関係が絶対に必要です」 2015年、産総研のコーティング技術を産業界に橋渡しすることをミッションとした先進コーティング技術研究センターが設立されました。技術を実用化するだけでなく、その製品が事業として安定した利益を生み、企業の競争力を高め、雇用拡大にも寄与するような橋渡しを成し遂げるため、企業と連携しやすい環境づくりが進められていきます。Liイオン電池材料を常温成膜するエアロゾルデポジション(AD)装置

元のページ  ../index.html#21

このブックを見る