産総研レポート 2015
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18研究開発の推進組織統治研究開発の推進労働慣行公正な事業慣行社会との共生人 権環境報告研究特集:産総研の橋渡し研究常温でセラミックス膜を作る革新的技術吹き付けるだけ-常識を覆す成膜法 一般にセラミックス材料は1000 ℃以上で焼き固めて使われます。そのとき焼き縮みが生じることや、融点が低い金属、ガラス、プラスチックなどと複合化できないことが弱点でした。そうした課題を克服したのが、従来の常識を覆すAD法です。開発者の先進コーティング技術研究センター長の明渡 純がこの研究に着手したのは、20年以上も前のことです。 「高温にした粒子を吹き付けて膜を作る“溶射法”に近い方法で、基盤上で粒子を焼結させる実験をしていたのですが、ある時、加熱した部分の膜はすぐ剥がれてしまうのに、周りの加熱していない部分の汚れカスは引っ掻いても削れないことに気付きました。それがきっかけで、常温でセラミックス粒子を吹き付けて基盤に衝突させただけで膜ができる“常温衝撃固化現象”を発見し、これをコーティング技術として応用することに成功したのです」 「ブレークスルーのポイントは、衝突による温度上昇の可能性より粒子そのものの機械的な破壊特性が変わるのではないかと考えたことです。調べていくと、セラミックス粒子の中に、常温で金属のようにグニャリとつぶれる性質をもつ粒子があることを突き止めました。つぶれた瞬間に化学反応が起きて強固に結合するため、AD法に適した性質の粒子をいかに作るかが鍵となります」AD法が世界の半導体製造を支える 明渡は1994年に常温衝撃固化現象を発見し、1997年頃から学会などで発表しました。いち早く反応したのは、学術界よりも産業界の方だったと言います。1999年にTOTO株式会社と共同研究がスタート。2002年からは産総研を中心に企業6社、大学4校が参加する大型の国家プロジェクト「ナノレベル電子セラミックス材料低温成形・集積化技術」を展開しました。そして一連の取り組みから、2007年に大きな成果が生まれたのです。 「TOTOが半導体製造装置にAD法を使ったコーティング部品を組み込むことに成功しました。IT端末の小型化・多機能化が進むにつれ、半導体デバイス回路の線幅が細くなり、従来は問題にならなかった加工中の小さなゴミの発生が、回路パターンの形成に妨げになってしまうという障害が発生していました。しかし半導体製造装置の内壁をAD法により常温で緻密なセラミックスがコーティングできれば、装置内の表面にプラズマが当たってもゴミが出なくなるのです。いまやTOTOのこの半導体製造装置用部品は、大きく世界シェアを伸ばしており、もしこのAD法でセラミックコーティングされた部品がなければ世界の半導体の供給に大きな支障が出るような状況になっ 傷、汚れ、熱、電流などから精密部品などを保護するセラミックス膜は、私たちの目に見えないところで生活や産業を支えています。産総研は、常温でセラミックスをコーティングできる世界初の技術「エアロゾルデポジション法(AD法)」を開発、半導体部材での実用化につなげ、世界の半導体産業の発展に大きく貢献しています。先進コーティング技術研究センター 研究センター長明渡 純(あけど じゅん)

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