産総研レポート 2015
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16研究開発の推進組織統治研究開発の推進労働慣行公正な事業慣行社会との共生人 権環境報告研究特集:産総研の橋渡し研究世界を席巻したスピントロニクスの新型素子次世代デバイスの開発に挑む スピントロニクスは、電子工学と磁気工学が融合した比較的新しい分野です。電子工学には半導体、磁気工学には磁気記録というITを支える主要な技術があり、二つの工学を融合したスピントロニクスは、IT社会の発展に欠かせないキーテクノロジーといえます。 この新しい技術を使えば、電荷と電子スピン(磁気)の両方を取り入れて次世代デバイスを作ることができます。そこで重要となるのが、スピンを使って電気を制御する技術で、指標となる磁気抵抗効果が高いほど、高性能で省電力のデバイスが実現します。1988年にはフェール(仏)とグリュンベルク(独)が性能を一気に10倍上げる巨大磁気抵抗(GMR)効果を発見し(2007年ノーベル物理学賞受賞)、1995年には宮崎照宣教授(東北大学)が性能をさらに数倍上げるトンネル磁気抵抗(TMR)効果を室温で実現しました。産総研スピントロニクス研究センター長の湯浅 新治は、その性能をまたさらに10倍上げようと挑んだのです。 「性能を一桁上げるとなると小手先の技術改良では到底無理で、新技術の掘り起こしが必要です。そこで、鍵を握る絶縁体の材料を酸化アルミニウム(AlO)から酸化マグネシウム(MgO)に変えて研究を進めました」MgO単結晶で世界最高性能に到達 基礎研究でのブレークスルーのきっかけは、製膜装置の開発にあったと湯浅は言います。 「絶縁体にMgOを使えば大きなTMR効果が出るという理論が発表され、世界中の研究者が実験をしたのですが、うまくいきませんでした。そうした中、私が成功に至る転機となったのは2002年、科学技術振興機構(JST)の基礎研究援助プログラム『さきがけ』に採択されて研究資金を獲得したことです。最初の1年間は製膜装置づくりに費やし、何も成果 産総研はスピントロニクス分野のトップランナーとして、世界が驚く成果を送り出しています。新型トンネル磁気抵抗(TMR)素子を開発し、ハードディスクドライブ(HDD)用磁気ヘッドに応用することにより、ハードディスクの飛躍的な大容量化や省電力化を実現しました。次世代IT機器のさらなる性能アップはもちろん、夢の待機電力ゼロにも期待が寄せられています。スピントロニクス研究センター 研究センター長湯浅 新治(ゆあさ しんじ)2003年に初めて酸化マグネシウムの薄膜を製造した実験装置

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