産総研レポート 2015
17/66

15研究開発の推進組織統治研究開発の推進労働慣行公正な事業慣行社会との共生人 権環境報告実用化を成功に導く企業の力 死の谷を越え、実用化を成功させるまでの道のりを語る中で、「すべての面で幸運に恵まれました。私は水を入れただけで(=スーパーグロース法開発時の水分添加)、ほかに何もしていません」と畠は振り返ります。その言葉には、実用化研究で重責を担う企業への期待がこもっています。 「企業にとって、新しい技術を実用化し、製品化に結びつけることは本当に困難なチャレンジです。それは、一つの技術を開発するより何倍も大変と実感します。よほど強力なリーダーシップと実力を兼ね備え、なおかつ経営陣の一人でなければ決断できません。今回パートナーとなった日本ゼオンの荒川公平さん(特別経営技監)は、これまでに何度も大きな事業を立ち上げた経験があり、実用化を成功させる実力の持ち主です」 「実は、日本ゼオンはこれまでCNTを扱ったことがないそうです。これまでCNTを扱っている企業は、積み重ねてきた技術を捨ててスーパーグロース法に乗り換える勇気を持てないのかも知れません」と畠は言います。「アメリカでNIH(Not Invented Here.=ここで発明したものではない)という言葉がよく使われますが、自社の技術に固執していると、新しい技術の価値が見えなくなってしまうことがあるのです」CNT産業創出に向けた拠点づくり 2015年4月には、「ナノチューブ実用化研究センター」が発足。産総研の歴史で初となる「実用化」を用いたユニット名は、畠が自ら命名しました。「分散・成形加工・塗布・紡糸・微細加工技術、安全性の評価技術、製品中のCNT評価技術など、用途開発の共通基盤となる技術開発を重視しています。産総研が担うべきは“支援”であり、企業や研究者の皆さんに“お仕えする”のが当研究センターの役割です」 新たな拠点づくりも着々と進んでいます。一つはナノカーボン実用化推進研究会で、2年前に活動をスタートしました。これはCNTの用途開発をする企業が一堂に会する、日本で唯一の場です。 もう一つは、研究センターの枠を超えて産総研内のCNT研究者が集結し、定期的に最新の研究状況を話し合う場づくりです。「産総研には、素材開発、用途開発、評価技術、安全技術などあらゆる分野の研究者がそろっています。みんなが集まることでそれぞれの研究が活きる。集まることに意味があります」 この2つの拠点を足場として日本発のCNT産業創出を目指します。

元のページ  ../index.html#17

このブックを見る