2013
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オープンイノベーション19オープンイノベーション ■ 器としてすでに商品化されています。現在、水素濃度まで計測できる水素センサーとしての開発も進行中です。 吉村研究グループ長ら環境応答機能薄膜研究グループのメンバーは、2010年、調光ミラーに関する研究で電気化学会棚橋賞を受賞しました。同研究グループが相次いで成果を発表する中、調光材料が再注目され、日本における調光材料の研究が活性化しつつあります。 木の細胞を滑らせて形を作る 木材が粘度のようにグニャリと形を変えたり、金属のように薄く伸びたり。木材の流動成形は、木の概念を一変させる世界初の技術です。多数の企業から問い合わせが殺到する中、現在20件の共同研究が進行しています。 この研究を手がける金山公三研究グループ長は、もともと金属加工が専門。木を扱い始めた当初は「木材とは口にせず、多孔質材料と言っていました(笑)」と、日陰のテーマだったようです。 研究は、まず圧密成形で丸太を四角にすることから始まり、その後、粉末成形の実験を繰り返す中で細胞間層が滑る現象を発見。木材をそのまま自由自在に成形する技術へと進化させました。 「鉄筋コンクリートで木質を例えると構成するセルロースは鉄筋、リグニンはコンクリートのようなもの。このリグニンを柔らかくするのがカギです。水が多いと滑りやすくなりますが、水以外にどんな添加剤を入れるともっと柔らかくなるか、添加剤によってどのような特性が得られるかを調べるのが重要なテーマ。これは目的に合った金属を作る合金設計と同じなので、合ごうもく木設計と名付けました」 もう一つの重要なテーマは、工具の開発です。成形する物により金型の材質や表面処理を変える必要があるため、熟練の金型技術者と共同研究を進め、まさに磨きをかけているところです。 プラスチックや金属に替わる材料 金山研究グループ長が目指すのは、現在プラスチックや金属で作られている自動車部品、家電製品、建材などを、木材の流動成形によって工業生産することです。木材は、環境に優しい循環資源で、適切な伐採と植林により二酸化炭素の固定量を増やせます。また、流動成形なら間伐材や生育の早い竹など、木の種類や状態を問わずに使うことも可能。 サッシも実用化への期待が大きいものの一つです。「木は100 ℃でも−20 ℃でも素手で触れるんですよ。それは、熱浸透率がとても優れているからです。木質サッシなら、真夏に火傷しそうなほど熱くなることも、真冬に凍るほど冷たくなることもないし、結露もしません。火事でも溶けたりゆがんだりしないので、延焼を防げます。さらに、調光ミラーガラスの窓枠に使えば、相乗効果でさらに省エネルギー効果が高まります。窓枠自体の面積は小さいけれど、その働きは重要です」 他にも、プラスチックと木質系材料との複合材料にも技術を応用でき、この複合材料に関しては、JISの作成を進めています。 流動成形技術は、今も進化し続けています。合木設計と金型開発と実用化研究が同時進行する中、まるで想定外の用途や思いもよらぬ製品に使われる日がくるかもしれません。産業技術総合研究所サステナブルマテリアル研究部門木質材料組織制御研究グループ長金山 公三(かなやま こうぞう)試作品(松・竹・梅を接合したカップやウッドコーンスピーカーなど)

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