2013
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オープンイノベーション18■ オープンイノベーション研究特集:産総研のエコな研究③窓と木材を変身させる世界初の技術 名古屋の産総研中部センターで開発された2つの技術が、いま熱い注目を集めています。それは、調光ミラーと木材の流動成形。どちらも環境に優しく、世界初の画期的な技術で、産業化に向けた共同研究が着々と進んでいます。 調光ミラーで夏の冷房負荷を低減 透明なガラスがみるみる鏡に替わり、瞬く間に透明に戻る。自在に素早く何度でも切り替えられる調光ミラーガラスが開発されました。 「窓の省エネ性能を左右するのは断熱性と遮熱性ですが、調光ミラーガラスは既存のどのガラスよりも遮熱性を高め、夏の冷房負荷を抑えることを目指しています。実用化研究をしているのは世界で唯一、産総研だけです」と意気軒昂に語る吉村和記研究グループ長。2001年に研究を始めてから今日まで、透明時の可視光透過率、耐久性、切り替え速度などを飛躍的に向上させてきました。特に2012年9月にはマグネシウム・イットリウム合金薄膜を用いて、1万サイクル以上の切り替え耐久性を実現。さらに2013年1月、画期的な切り替え方式の開発にも成功しています。 「これまでのガスを使う切り替え方式は、ペアガラスの約5 mmの隙間に、水を電気分解して発生させた水素または酸素を含むガスを流し込みます。新しい方式は、2枚のガラスを密着させ、それでも残る0.1ミリ程度の隙間にガスを流し込みます。このとき、空気中の水蒸気を使って電気分解するため水が不要で、発生する水素はごく微量で、すぐ調光薄膜に吸収されてしまうので安全です。さらに、調光ミラーシートを既存のガラスに張るだけで使うこともでき、ペアガラスでないと使えないという制約がなくなりました。シートなら板ガラスと違ってロール状で薄膜加工できるので生産性がよく、コストも大幅に下げられます」 ビルや車など幅広い用途に期待 最先端の調光ミラーガラスを「ぜひ実用化したい」という企業が続々と名乗りを上げ、現在順調に共同研究が進んでいます。応用が期待されるのは、建物、自動車、列車、飛行機などの窓ガラス。とくに最近はガラス張りのビルが増えているため、そうした建物に使われれば大きな省エネルギー効果が期待できます。また、炎天下に駐車してもスイッチ一つで遮熱できるようになることから、自動車会社からも注目されています。「企業との共同研究でいろいろな用途を開拓し、日本発の技術としてぜひ商品化までもっていきたい。今が正念場です」と吉村研究グループ長は気合い十分。その市場は、世界へ広がる可能性を秘めています。 それに先立ち、水素に触れると光学的性質が変わるという性質を使い、この技術をまったく別の用途に応用した「水素可視化シート」が、簡便な水素検知建物に実装できる調光ミラーガラスで省エネ性能を測定産業技術総合研究所サステナブルマテリアル研究部門環境応答機能薄膜研究グループ長吉村 和記(よしむら かずき)

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