2013
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オープンイノベーション17オープンイノベーション ■ 魚の養殖、消雪など、段階的にむだなく使い切るのが理想です」と訴えます。 地熱発電と直接熱利用の両方を進めていこうという例が秋田県湯沢市にあり、阪口研究グループ長も「湯沢ジオパークでは、地熱資源を地域全体で活用し、地域の振興につなげようと取り組んでいます。このように、地熱を地域の宝として開発・運用するのは素晴らしいことです」と大きな期待を寄せています。 2012年、安川研究グループ長は広く市民に地熱発電への理解を広める功績により、科学技術政策研究所から「ナイスステップな研究者」に選ばれました。地熱発電の可能性をさらに広げるため、親しみやすく印象的な表現で次のように提言します。「地熱発電所は、小さく造って大きく育てるのが一番いい方法でしょう。これは、生産井を1本掘って実際に運用し、地下の流動の変化を見極めた上で規模を拡大していくという考え方です。地熱プラントを、工場ではなく植物(プラント)をイメージして開発すれば、地下に根をはって地表部分が次第に育ち、環境にマッチしたデザインとなるのではないでしょうか」 日本独自の地中熱システム開発へ 地中熱の利用については、これまで北海道や東北地方を中心に普及してきましたが、最近では東京スカイツリー地区、羽田空港国際線ターミナルなど各方面で導入が進んでいます。今後の可能性について、内田主任研究員は意欲的に語ります。 「私の目標は、地域の地質や地下水の流動状況をうまく活用し、日本独自の地中熱システムを提案することです。例えば、地中熱ヒートポンプには、豊富な地下水を直接汲み上げる地下水利用型と、取水せずにどこにでも設置できる熱交換器型があります。さらに、湧き水の熱を回収して使うことも可能です。また住宅密集地なら、数軒が共同で熱交換井を設置し、地中熱エネルギーをシェアする方法も有効でしょう。 もう一つ、農業関係の研究により、ハウス栽培で夏場に作物の根を冷やすと生産性が上がることがわかってきました。通常ハウス内は暖房のみですが、地中熱を使えば冷房もできます。そのため、農業分野にも地中熱を利活用していこうという動きが始まっています」 各家庭から大型の商業施設や公共施設、さらに産業分野まで、クリーンな地中熱エネルギーが日本の社会にしっかりと根を広げつつあります。2013年7月地質標本館に導入された地中熱ヒートポンプシステム左から産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門地下水研究グループ主任研究員内田 洋平(うちだ ようへい)産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門地圏環境評価研究グループ長安川 香澄(やすかわ かすみ)産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門地熱資源研究グループ長阪口 圭一(さかぐち けいいち)

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