2011
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とさず、節約できる方法を考えざるを得ませんでした。そこで『研究の再構築』を宣言し、職員に理解と協力を呼びかけたのです。」 ポイントは、節電と省スペースです。まず節電については、所内で30%減を目標としました。ただ電気を消すだけでなく、エネルギー効率の良い機器や設備への転換を加速。さらに、実験装置、クリーンルーム、冷凍庫、排ガス除害装置などを集約して共用化。これらの対策により今夏政府の求めた15%の節電目標をクリアし、結果的には30%減の自主目標を超える節電を達成しました。 省スペースについては、産総研の発展についての考え方を転換したと言います。「今まで、発展というのは新しい建物を建てて新しい装置を入れることだと考えられていました。しかしこれからの発展は、むしろ無駄なスペースを削り、研究の効率を高めることです。」 そこで、どの研究テーマを優先し重点化するかという議論をもとに、省スペースを実行しました。その結果、以前より使い勝手が悪くならない状態でスペースの10%減を達成しています。放射線計測をはじめとする多様な支援 こうした研究所内の対応と同時に、社会に向けた情報提供や技術協力にも努めました。その一つが放射線計測に関するものです。産総研は、精密な測定にかけては国内トップの機関であり、放射線量を測定する国家標準器も所有しています。 「原発事故後、4カ国が自国の計測器を持って現地に入っており、それぞれ異なる計測値が出たときは産総研が行司役を務めました。もし日本の放射線計測値が世界から信用されなくなったら、風評被害は格段に大きくなっていたでしょう。しかし各国は日本の計測値を十分信頼してくれました。」 HP上でも、放射線計測の信頼性を世界に向けて発信。加えて、構内で計測した放射線量のデータを、3月15日から公開し続けています。また、福島県に研究者を派遣し、工業製品の放射能汚染状況の測定を支援しました。さらに、つくば市及び周辺地域に専門家を派遣し、放射線測定の支援や問い合わせに対する対応、講習会の開催などに協力しました。 一方、地震関連の情報としては、西暦869年の貞観津波に関する研究成果をはじめ、地質情報や津波浸水エリアの画像情報など、さまざまな研究成果を発信しています。原発周辺地域からつくばへの避難者には、いやし系ロボット「パロ」とのふれあい、研究成果の展示施設への招待など、心のケアでもお手伝いしました。今後1000年間の参考になる教訓を 産総研では東日本大震災から多くの教訓を得て、防災対策マニュアルを全面的に見直しました。避難方法、耐震固定、備蓄品などにその教訓を反映しています。 また今回、まさに日本の危機に直面した中で30%節電と10%省スペースを達成できたことについて、「電気代がマイナスになった分、研究に使えるお金がプラスになる。スペースを10%浮かすのは、10%建てたのと同じこと。そうした前向きの話をし、高い目標を示せたことが力となったのかもしれません。本当にみんなよくやってくれました。」と、小野副理事長は感慨深く振り返ります。 「常日頃から対策をとっていても、被災して初めて分かったことがたくさんあります。我々の記憶が薄れないうちに、それこそ1000年に1度の地震災害であるならば、今後1000年間の参考に耐えるものを残さなければいけないと思っています。」05組織統治組織統治

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