2011
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小型化を実現したシリコン(Si)MOSFETと炭化ケイ素(SiC)SBDによるハイブリッドインバータ(手前)、従来品に比べ出力パワー密度が約1桁向上した。奥の2台は従来型シリコン(Si)インバータ省エネ社会を支えるSiCパワー素子電気の変換ロス削減に挑む 発電所で作られた電気を家庭やオフィスで使えるようにするには、変電所や電力変換器で何度も周波数や電圧を変換しなければなりません。しかし、変換するたびに必ず電気のロスが発生します。その変換ロスを小さくし、限りなく100%近く使えるようにすることを目指して、先進パワーエレクトロニクス研究センターでは、電力変換器に使われるパワーデバイスを開発しています。 こうした電力変換技術には、低炭素社会や省エネルギーを実現するうえで大きな期待が寄せられており、国内外で開発競争が繰り広げられています。しかし、主力のシリコン(Si)パワーデバイスは、その性能が限界にきています。そこで新しい材料である炭化ケイ素(SiC)を用いた高性能パワーデバイスを開発しました。これにより、動作時の抵抗値をシリコン(Si)パワーデバイスの200分の1まで低減させることができます。SiCデバイスはまさに夢の技術です。シリコン(Si)から炭化ケイ素(SiC)へ シリコン(Si)パワーデバイスの限界を超えるため、半導体材料を炭化ケイ素(SiC)に変える。一言でいえばそうなりますが、その開発は非常に困難でした。なぜなら当初、シリコン(Si)に比べて炭化ケイ素(SiC)のウェハは欠陥が発生しやすく、大口径の基板を作る技術もなかったからです。そこで、高品質で口径の大きいウェハの開発に挑み、高品質なエピタキシャル成長技術の開発にも成功。カギとなる技術について、原田信介主任研究員は次のように解説します。 「産総研では、炭化ケイ素(SiC)を使ったSBD(ショットキー・バリア・ダイオード)とMOSFET(金属・酸化物・半導体電界効果トランジスタ)という2種類のデバイスを開発しています。とくにMOSFETについては、炭化ケイ素(SiC)と酸化膜(絶縁体)の界面におけるチャンネル移動度を向上させたIEMOSを開発しました。ポイントは、MOSゲート領域を形成するのに従来のイオン注入法ではなく、エピタキシャル成長といって膜を堆積することにより結晶品質の良いn型やp型の領域を作る構造を考案したことです。これにより2006年、耐圧660Vでオン抵抗1.8mΩcm²という世界最小抵抗を達成しました。」 こうして開発したパワーデバイスの要素技術を基に、現在はいよいよ量産技術を確立する段階にきています。「死の谷」を乗り越え量産化へ 多くの場合、研究開発と事業化の間には「死の谷」と呼ばれる深い溝が横たわっています。産総研は、死の谷を乗り越えて研究成果を社会に役立てるため、企業と連携する新たな体制を整えました。炭化ケイ素(SiC)パワーデバイスの量産化に向けたプロジェクトでは、富士電機、アルバックの限りなくロスの少ない電力変換技術は、いま世界中の精鋭たちがしのぎを削る研究分野です。産総研の先進パワーエレクトロニクス研究センターでは、世界最高水準のパワーデバイスの開発に成功。間もなく量産化され、世の中に送り出されようとしています。研究特集:産総研における省エネルギー研究 ●114オープンイノベーションオープンイノベーション

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