産総研LINK No7
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BUSINESSMODEL人とロボットの協働で、ライフサイエンスの研究に変革を起こす ライフサイエンスの研究現場では、大規模なベンチワークが求められ、研究者たちは膨大な手間と時間のかかる作業に追われている。また、人手に頼るため、実験を行う人の経験値や技術に結果が左右される面もあり、それが研究の再現性の難しさや不透明性を生む原因ともなってきた。 この問題を何とか改善したいと、手間作業の自動化に取り組んできたのが、タンパク質の研究者である産総研の夏目徹だ。 「約15年前にかかわっていたプロテオーム解析プロジェクトでは、年間1万件の試料の解析が必要でした。実際に解析するのは若い研究者たちですが、作業には膨大な手間と時間がかかるため、そこに携わっていると、本来するべき自分の研究が一切できなくなってしまいます。これでは若い人のキャリアをつぶしてしまうし、職場に魅力を感じてもらえなければ辞めてしまうかもしれない。そういったリアルな危機感が自動化に取り組んだ出発点でした」 夏目は、産業用ロボットを応用したベンチワークロボットの開発に着手した。ベースに用いたのはライン生産を前提にしたロボットだったため、人間が使う道具は使えない。解析などの作業ステップごとにロボットハンドや専用の治具などが必要になり、それらの設計開発から始め、完成するまで5年もかかってしまった。 「ところが、ライフサイエンスの研究現場では作業手順などの変更が頻繁に行われるため、一つの作業に特化させた自動化ロボットでは、すぐに対応できなくなってしまいます。つまり、この形のロボットだと、やっと完成させたにもかかわらず、あっという間に使い物にならなくなってしまうのです」 これは、それまでライフサイエンス分野で自動化装置がつくられるたびに起こった問題でもあった。自動化装置を導入するとコストは上がるうえ、使いこなすための時間もかかり、しかも、長くは使えない。結果として効率が下がってしまうため、研究現場は自動化への投資に消極的になることが多かったのだ。 夏目はこの反省から、一つの作業に特化した専用ロボットではなく、人が使うツールや周辺機器をそのまま使え、しかも一台のロボットで人間が行うすべての作業研究者を手間作業から解放したい汎用ヒト型ロボット「まほろ」が人間の創造性を高めるライフサイエンスの研究現場から膨大な手間作業をなくしたい。その思いから始まったロボットの研究開発は、2012年、汎用ヒト型ロボット「まほろ」として結実した。人間のさまざまな動きを再現するだけでなく、人間には不可能な高精度な作業もできる「まほろ」は、今後、研究現場を一変させる可能性を秘めている。その「まほろ」を世に送り出そうと事業化を進めるのが、産総研技術移転ベンチャー「ロボティック・バイオロジー・インスティテュート株式会社(RBI)」だ。同社は今、これまでなかった新しい市場をつくり出すべく、世界に向けて動き始めた。産総研 ロボティック・バイオロジー・インスティテュート03 2016-07 LINK

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